2012年8月19日日曜日

130. SONYが最近面白い2(ようやくフルサイズミラーレス?)

1ヶ月前くらいだろうか。
デジカメの新製品に関する噂まとめサイト「デジカメinfo」で、ついに、SONYが業界最大手の一角ニコンを、累計の「噂数」で抜いてしまった。

デジタル一眼レフでは、キヤノンとニコンが大体シェアを30〜35%ずつ取っていて、二強の争いが長らく続いてきた。これはデジタル一眼レフ分野では今なお続いていることだが(ロンドンオリンピックでのシェア争いは記憶に新しい。両社とも「我が社の方が五輪でのシェアは高かった」とする勝利宣言をした、奇妙な事態も見られた)、ミラーレス機の登場から徐々に構図が変わってきている。

ミラーレス機の市場のみに注目すると、ミラーレス機を最初に始めたPanasonicや、PENシリーズやOM-Dが売れているOLYMPUSが一定のシェアを獲得している(およそ3割前後)。しかし、この二社の製品はマイクロフォーサーズ(m4/3)という比較的小さな撮像素子(17.3×13mm)を積んだ機種であり、「素子の大きさ」にこだわる自分としては、関心の対象外だった。

一方、SONYはAPS-Cサイズというデジタル一眼レフで多く採用されている比較的大きな撮像素子(23.4×16.7mm)を採用し、かつボディを小さくまとめた「NEXシリーズ」を投入した。2010年6月のことだ。

それ以来、SONYの動きは非常に活発だ。製品のサイクルが非常に早く、次から次へと新製品が発売される。ユーザーからは様々な意見(交通整理が必要では?や、カメラ本体の開発より弱点のレンズを開発してくれ等)が出ているが、NEXの登場で明らかにミラーレス市場は活性化したと思う。

先日公表されたキヤノンのミラーレス機EOS-Mは、その大きさや、フランジバック(*)、性能を見る限り、「キヤノンがやるNEX」と言ってもいいくらいで、両者は瓜二つだ。それだけ、NEXがエポックメイキングな存在だったと言えよう。逆に考えると、2010年6月から2年以上経って、ようやくキヤノンは似たような機種を出してきたわけで、動きが遅いと言えば遅いとも言える。とはいえ、キヤノン開発陣からしてみると、APS-Cで使える像面位相差AFの搭載にはこの年月が必要だった、市場の動向を読むにはこの年月が必要だった、シニアがこの方向性に了承するのに(意思決定するのに)この年月が必要だった等、色々と言い分はあるだろうから、そこはとりあえず無視しておこう。APS-Cでミラーレス機を業界最大手のキヤノンが出してきた、ということ自体が十分評価されるべきだと考える。

(*フランジバック:レンズの後玉から撮像面までの距離。これが短いということは本体が薄いことを意味する。また、フランジバックがより長い他社のレンズをマウントアダプターを介して使用することができるようになるため、オールドレンズで遊びたい人にとっては、基本的には短い方がありがたい。)

さて、NEXが出た当初、僕がまず思ったのは「小さいなぁ!」だった。
(とにかく薄く、軽く、結果として、レンズを付けると出目金のごとく不格好になる。これはAPS-Cサイズの素子を積みつつ(=レンズはそれなりに大きくせざるを得ない)小型化を行った副作用のようなもので、ある程度致し方ないものだ。当然、EOS-Mでも同様の悩みは発生するだろう。)

そして、次に思ったのは、「APS-Cでここまで小さくできるなら、35mmフルサイズでも小さなカメラができるんじゃないか?」
だった。

この話をカメラ好きの友人何人かに言ってみたのだが、そのときは、
「フルサイズは基本的にプロユースを意識したラインだから、それに見合うAF性能やその他の機能が追いつかないと商売にならないでしょう。性能を積むということは、サイズは必然的に大型化してしまうし、フルサイズでコンパクトというのは成立が難しいのでは。」
「撮像素子を大きくするということは、ウェハの切り出しで歩留まりがとても悪くなる。生産のコストを考えると、そうやすやすとは小型軽量の廉価モデルとしては、出しにくいでしょう。」
という否定的な意見が多かったように記憶している。


しかし、時代は移り変わりつつあるようだ。
ニコン、キヤノンは恐らく廉価版フルサイズ機(ミラー有り)を投入してくるだろう。フルサイズエントリー機と言えるこれらの機種(D600とEOS 9D?)は、プロユースというより、ハイアマ〜ミドルユーザーあたりをターゲットにしたモデルとなるだろう。
つまり、「フルサイズを気軽に」という時代まであと一歩といった状況だ。

そしてここに来て、

「SONYがフルサイズのNEXシリーズを開発している。」

との噂が流れてきた。
ようやくか。
いや、早かったと言うべきかもしれない。




(上図は、SONYのフルサイズNEXの噂を報じるデジカメinfoの画面(http://digicame-info.com/)。左袖のカテゴリ欄で、ニコンの記事数が807であるのに対して、SONYが823であることが分かる。)


APS-Cの素子を搭載したEOS-Mの登場で、また一つドミノが倒れたのかもしれない。もちろん、フルサイズNEXというのは、まだまだ噂の段階で、この後、どうなるかは分からないが、それでも、時代の流れは確実に、そこに向かっていくのだろう。

フルサイズNEXが出るとすると、まず、マウントがもう一つ増えることになる。SONYは現在、コニカミノルタから引き継いだデジタル一眼レフ(αシリーズ)用のAマウントと、NEX用に開発したEマウントの二つのマウントを保有しているが、フルサイズNEXを出すとすると、ミラーレスな分、Aマウントよりはフランジバックは短くなるだろうし、フルサイズのイメージサークルをカバーするには、Eマウントよりは大きなマウントにする必要があるだろう。イメージとしては、Aマウントの口径で、フランジバックはEとAの中間くらいといった感じだろうか。これくらいのサイズでフルサイズミラーレスが出たら・・・確実に買ってしまうな。

問題は、AF性能か。
ミラーレス機でも比較的早いAFを達成できる、「像面位相差AF」もしくは「像面位相差AFとコントラストAFの組み合わせ」は、今後どの程度スピードと精度を上げていけるだろうか。ミラー有りの一眼レフ機では、「位相差AFセンサー」というAFに特化したセンサーが搭載されており、AFのスピード/精度ともに速い。現状では、像面位相差AFやコントラストAFとの組み合わせでは、位相差AFにはスピード/精度ともに到底及ばない。センサーのサイズが大きければ大きい程、被写界深度(ピントが合っている深さ)が浅くなるので、AFはよりシビアになってくる。これをどれだけ詰められるか。像面位相差AFの開発競争を制したものが、次代の覇者となる可能性が高いと言える。

僕はカメラの開発に携わっている人間ではないので詳しいことは分からないが、像面位相差AFの技術的な伸びしろがまだまだあることを期待したい。

それにしても、ようやく、高級フィルムコンパクトカメラに対抗しうるレベルの35mmフルサイズデジタルカメラが出るのかもしれない。僕はこれをどれだけ期待していたことか。(EOS 5D MkIIをメインに使っているが、ちょっとした外出には大きすぎる。しかし、一度5D MkIIの画質に慣れてしまうと他の機種(APS-C以下)を使う気になれなくなってしまう。フルサイズかつ小型というのは、正に理想のカメラ(の一つ)なのだ。)

それにしても、PENTAXはどうするのだろうか?
こういったダイナミックな潮流に、デザインやカラーバリエーションだけで勝負していくのだろうか?
また、これまで通り、APS-Cのカメラに注力して、スペシャリティを狙って行き続けるのだろうか。
フルサイズミラーレス、一番出すべきなのはPENTAXなのではないだろうか。
(一方で、一番「出しやすい」のが、撮像素子屋として卓越した技術力を持つ、SONYなのも分かるのだが。)

SONYの今後が実に楽しみだ。