2015年2月8日日曜日

193.ペンタックスの始動

ペンタックスファンのみなさま、おめでとうございます。
ついに、待望の「フルサイズ機」が正式に開発発表されました。
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出典:デジカメWatch http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20150205_686692.html


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これまで本当に長い間ペンタックスファンは、「フルサイズ機」の登場を待ってきた。

もちろん、キヤノンやニコンといった大手との差別化で、APS-C注力路線を堅持すべきだ、という意見もあったので、全員が全員待っていたという訳ではなかったが、それでもフルサイズはペンタックスファンの一つの夢だったと思う。

しかし、ペンタックスにはフルサイズに踏み出せない足かせがあった。銀塩カメラからデジタルに移行した際、純正レンズのイメージサークルをAPS-Cに最適化しており、結果としてフルサイズをカバーできる最新のレンズが皆無となってしまっていたのだ。このため、「例えフルサイズ機を出してもレンズ資産がほとんどなく、システム構築に莫大なコストがかかり、採算が合わない」と言われていた。

実際、ここ数年何度も「フルサイズ機の開発は行っているが、具体的な発売の目処はたっていない」といった趣旨の発言をペンタックス開発陣は繰り返しており、毎回、「今度もか・・・」とため息をついたものだった。

それがあまりにも長く続いたため、自分は我慢できずペンタックスのKマウントから、キヤノンのEFマウントに鞍替えしてしまった。それが2009年。もう今から5年以上前のことになる。時間が経つのは本当に早いものだ。

しかし、それでも自分の一眼レフの使用歴は、Kマウントから始まったことに間違いはなく、特別な思いを持ってペンタックスの動向を見つめてきた。

考えてみると、ペンタックスは、ここ数年、「激動」と言ってよい経験をしてきた。
親会社のHOYAから不採算事業として扱われ、その後RICOHによって買収されることとなる。
結果、今ではペンタックスは「一眼レフのブランド」ではあるが、「カメラメーカー」としては存在していない。
象徴的なのは、背面液晶の下部で、ここを見ると、PENTAXではなく、RICOH銘がプリントされているのだ(この点が古参のペンタックスファンにはどうしても受け入れられない)。

一眼レフのラインナップもめまぐるしく変化してきた。
K10D、K100D時代(2006年頃)から自分はペンタックスを使用し始めたが、このときは、APS-Cの一眼レフ2機種のみというシンプルなライン構成だった。形状も、カメラしかりとしたもので、どちらかというと保守的なデザインのものだったように思う。

初級機のK100Dと、中級機のK10Dは、それぞれ同じクラスの他社競合品よりも、やや機能的に良く、「中級機までの使用」「高速なAFを必要としない風景写真での使用」として割り切るのであれば、悪くない選択肢だったと記憶している。(しかし、その上のクラスが不在で、ここが他社ではフルサイズ機となる)

それが、やがてデザインを中心として急激に変調を来す。
K-xのカラーバリエーション100色展開や、マークニューソンデザインのミラーレスカメラK-01(ただマウントは、一眼レフと同様のKマウントのままでこん棒のように分厚いミラーレスになってしまった)、小型化を最優先とした結果、撮像素子までコンデジ並みに小型化してしまったQシリーズ(普通は撮像素子の大きさはなるだけ確保して、筐体の大きさを小さくする努力をするのだが、そのような一般通念を度外視し、ある意味銀塩の110カメラのように撮像素子まで小さくしてしまったという賛否両論を巻き起こしたミラーレス)、最近のエントリー機種は若者向けのデザインを重視し、LEDを前面に配置している(K−S1)等、「遊び感」のあるポップな開発路線を展開した。

その一方で、K−7、5、3とK10Dの本格路線を引き継いだと思われる、真面目な中級機カメラも作ってきた。また、645Dに始まる中判デジタルへも踏み出し、結果として、645、APS-C、Qシリーズと撮像素子のラインが3本に分かれることになる。市場シェアで10%に満たない会社にとっては、これらラインの維持、そして対応するレンズ群の構築は相応のきつさを伴っているものと思われる。

そこに今回、フルサイズが新たなラインとして加わることになる。
それもレンズ群の新規構築という大きな課題を伴って。
これは大きな決断だったと思う。
今後、進む道はかなり険しいと思われるが、それでも是非がんばってほしい。

さて長らく、噂され、そして期待されてきたペンタックスのフルサイズ一眼レフ。
自分は、1年程前に以下のような記事を書いていた。
http://7billionth-essay.blogspot.com/2014/01/1702013.html

そこでは、
  • 銀塩時代の名機 PENTAX LXをデジタル版として復活させた機種(LX−D)
  • マウントは新マウントで、かつミラーレスに思い切って変更する
というようなことを、「フルサイズ後発のペンタックス」にとってはいいのではないかと考えていた。


しかし、蓋を開けてみると、全くはずれてしまい、

  • デザインエッセンスは、LXではなく、中判カメラの67IIがモチーフの模様
  • マウントは、Kマウントで、かつミラーありの通常の一眼レフ
であった。
PENTAX 67(出典:パンフレット)

ただ、自分はこれに思った程がっかりしていない。
むしろ、ペンタックスが自身の強みを徹底的に見直し、突き詰めた結果として、こうした回答を用意したのだと理解している。

自分の考えは、オリンパスのOM-Dシリーズのフルサイズ版で、「デジタル技術で過去の名機を現代版に刷新する」という戦略だった。

デジタルカメラになり背面液晶の必要性から大型化したボディと、テレセン性のため巨大化したレンズを、「ミラーレス構造とEVFで、再度フィルム時代のサイズまで小型化する」という発想だ。

しかし、ペンタックスは、EVFではなく、光学ファインダーを選んだ(のだと思う)。
ペンタプリズムを国産メーカーとして一番に導入し、一眼レフの普及を担ってきた、というメーカーの歴史を譲りたくなかったのだろう。

さて、フルサイズ機のデザインの主張は、一言で言えば「よく見えるファインダー」だ。
特徴的なとんがり頭のファインダーは、ソニーの名機α900(デジタルカメラ史上、最も倍率の高い、最も明るくクリアなファインダーを搭載)の面影を感じる。
人によっては、LXの稀少ファインダーFA-2を思い浮かべるかもしれない。

いずれにせよ、光学ファインダーを極めるという方向性は、ソニーがα900を最後に放棄してしまった路線なので、今となっては差別化の訴求点としてあり得るポジションだと思う。(つい先日まで、日本に帰ったら中古でα900を購入しようと思っていたくらいなので、僕自身、そのニーズを持っている。)

明るいファインダーに明るいレンズをつけると、本当に世界が明るく見える。
撮影者と世界をつなぐのは、ファインダーだ。
撮影体験は、ファインダーとシャッター音、そして各部の操作感によって構成されている。このため、光学ファインダーを極めるという方向性は、とても好ましいと思う。

手元には、売却せずにとっておいたKマウントのカールツァイス Planar T* 1.4/50がある。
APS-Cでは75mmの中望遠となってしまい使いどころが難しかったが、フルサイズであれば標準の50mmとなり、開放F1.4によるボケも楽しめる。

明るいファインダーに、明るいレンズの組み合わせ。
これは正に自分にとって最高の提案になる。
続報を楽しみに待つとしよう。