2014年9月27日土曜日

185. New Jerseyにて

今日から米国である。

9月26日 16:50に成田を出発し、同日の16:30頃にNYCのJFK空港に到着した。
フライトが大体13時間かかる上に、時差が13時間あるため、出発した日時とほぼ同日時に到着することになる。これが、アメリカ東海岸側の特徴だ。

通常家族帯同で赴任する場合、夫が先に出国し、家を決め、一通りの生活基盤を整えてから(1ヶ月後くらいに)妻と子供が出国し、現地で合流するというのが一般的らしい。

しかし、我が家はまだ手のかかる1歳児がいるため、「家族同時に出発」という道を選んだ。

結果、11箱の段ボールと衣装ケースを手荷物として移動させることとなった。かなり大荷物で、カート一つには載りきらない。成田空港でも、JFK空港でも、またホテルでもちょっとした引越作業の様相を呈していた。

ただ、いずれの場所でも、手助けしてくれる人はいて、特にJFKでは6ドルかかる手荷物カートを2台も貸してくれて、かつ、税関まで一緒に通ってゲートまで荷物を運んでくれた人までいた。(全日空所属と思われる白人の方だった。また、同じく全日空所属と思われる韓国人の方も荷物の積み込みに手を貸してくれた。この人たちがいなかったらと思うと、ぞっとする。最後に、Welcome to US! と笑顔で言っていただけたのが印象的であった。本当にありがとうございました。)

僕はL1ビザというもので入国したのだけれど、通常のimmigrationとほとんど変わらないような手続きで入国できた。聞いていた話では、通常のカウンターとは別にimmigrants用のカウンターでビザ関係書類の提出が必要とのことだったのだが、特に書類を提出することもなく通り過ぎてしまった。

担当官には書類の提出は不要かと確認したのだが、全く必要ない、とのことであった。
ルールが変わったのだろうか。謎である。

さて、米国には出張や学会で5回ほど来ている。そのうち、3回は支社のあるNJ州だ。
というわけで、ちょっとは地理や習慣を見知っているつもりになっていたのだが、やはりまだまだ全然であった。

今日学んだこと。

  • レストランでチップを払うときには、レシート(兼 支払い明細書)上にチップ代を明記しないといけない。普通のレストラン(というか、Bear's Burgerというハンバーガー屋)では、チップの相場は、15, 18, または20%であった(レシート上に選択肢と、それぞれの金額が印字されている)。サービスへの満足度に応じて選択する方式だ。僕は、チップ代を含めて多めに渡したのだが、レシートへのチップ代の記載をしなかったため(正確には、20%に丸をしたのだが、それでは通じないらしく)、見事にチップ分のおつりが返ってきてしまった。
  • 1ドル未満のコインの使い方が下手である。コインの種類を覚えた上で、少し練習しないと咄嗟に払えないように思う。これは聞き取りの問題も含まれる(さらりと言われる2桁の数字を正しく捉えないといけない)
  • 大抵、レストランでは食事中にEverything is OK?的なことをスタッフから聞かれる。このとき、つられてOKとかGoodとか言うのだが、アメリカ人を観察していると、Perfetct!とか、割と大きなリアクションでほめていた。なるほど、うまいと思っているときには、あれくらいのリアクションをしてもいいかもしれない。(今日行ったBear's Burgerという店は確かにうまかった。)

小さなこと、些細なことでも、勉強だ。
まずはアメリカ生活ってこんなかんじ、というのを自分の中で咀嚼できるよう、ひとつひとつ意識して理解していこうと思う。

2014年9月23日火曜日

184. Rockstar

A Great Big WorldのRockstarがとてもいい。
写真新世紀の会場でかかっていた曲で、あまりにいいので歌詞を聞き取り、検索して探し当てた。今日、それを聞きながら引越作業をしている。この時間サイクルの短さが、現代らしくて心地いい。

さて、明日には荷物を搬出し、金曜日9月26日には、いよいよ出国だ。

先日、米国支社で上司になるVice Presidentと1 on 1でミーティングをした。
相手のExpectationを確認するために自ら申し込んだものだ。

いろいろと聞いたけれど、何より心に残っているのは、
「Excitingしているか?」
という一言だ。

楽しめよ、ってことだろう。
そうだよなぁ。そういうものだってことだろう。

いろいろと不安はあったり、焦りはあったりするけれど、もうここまで来たら、やるしかない。

興奮と勢いで、あらゆるボタンを押してこよう。
前向きに、真剣に、そして楽しむ。
気分は、Learnerだ。何もかも、先生にしてしまおう。

突き抜けた先に、どんな世界があるのかは分からない。
けれど、踏み出そう。アクセル全開で。

(ただ、事故には気をつけないとなぁ。New Jersey州は事故が多くて有名だ。)

2014年9月13日土曜日

183. Farewell party

大使館面接も無事終わり、後はビザの発給を待つだけだ。
引越の準備はまだまだだが(自作の壁を壊さなければ)、不要品の回収は大体めどがつきつつある。
あとは、郵送の転送設定に、引越の荷造り、そして友人・知人へのお別れの挨拶である。

ここ最近、会社の同僚や同期、写真サークルの友人達とお別れ会を開いてきた。
今日は写真サークル仲間とのお別れ会だった。
このサークルの参加者も、徐々に代替わりしてきて、もう僕の年代はピークアウトしてしまっている。サークル本体に出ても、もう僕にとっての「いつものメンバー」は、あまりいない。

その点、今日の会は、「いつものメンバー」でほっとした。
天気もよくて、清々しい。
出国前に会えてよかったなと思う。

ふと、「人狼ゲーム」をやっていたことを思い出す。
まだ子供が生まれる前で、時間にゆとりがあったとき、
4年くらい前だろうか。最低でも8人程いないと成立しないゲームである。
みんな、時間があったのだ。
そういう人生の余暇の時期だったのだと思う。

やがて、結婚し、子供が生まれ、転勤があり、と大きな転機を迎え、場所を変え、時間の過ごし方も変わっていく。

人狼ゲームは疑心暗鬼になる心理を楽しむ、という緊迫感のあるカードゲームだが、今となっては、「懐かしい」と思う。

懐かしさは、「安心感」を伴う。なるほど、僕も随分と人間らしくなってきたものだ。

2014年9月8日月曜日

182. やってみよう。一生懸命。

10月1日より、米国に赴任することが決まった。
これから約20日後の9月26日には引越で、米国に向かうことになる。

世界的に見て、臨床開発が最も盛んで、進んでいるのは米国だと思う。
これは、9年前、今の会社に入社する前から知っていたことで、「いつかは米国で挑戦したい」と思っていた。
その小さな夢が叶いつつある。


いよいよ仕事人生、第二幕。
勝つか、負けるか。
五分五分といったところ。
不安と緊張で、息が詰まる。

実際に行くことが決まり、具体的にその日が近づくと、
こんな疑問がふと頭をよぎる。


「通用するだろうか?」


海外で活躍するスポーツ選手も、渡航前にはこんなことを思ったかもしれない。
なんて、そんなスター達に比べるにはあまりにも些末なサラリーマンだが、それでも、どうしたって重ねてしまう。別にいいだろう、脳内の話である。

非ネイティブで、留学経験なし。
帰国子女というわけでもない、純国産製の32歳。

英語は、この履歴から考えると、そこそこだと思う。
TOEICで900点は超えている。
しかし、実際のところ、どうだろうか。

冷静に「引き」で見てみると、恐らく、「スタートラインに立てているかどうか」という程度に過ぎないように思う。
英語に不安がない、と言えば嘘になる。
900点という点数はその程度だ。
きっと、例えば米国でMBAを取得した人などからするとよくわかるだろう。
TOEIC 900点は、その程度なのである。

仕事は、あちらでも、臨床開発を担当する。
新薬の開発である。

今と同じ種類の仕事だが、文化的な要因が強い職種でもあり、勝手が違うのは明らかだ。
また、非常に言語に頼った仕事である。
すごくざっくり言うと、20%がサイエンスで80%が言語で出来ている、と言っても過言ではないくらい、言語に頼った職種である。

アメリカ人同士の手加減の一切ない会話の中で、自分はついていけるだろうか?
なにがしかの貢献(つまり、米国人のチームに喜ばれる、よい働き)はできるだろうか?
組織の信頼を得ることはできるだろうか?

電話会議で、「日本人向けに手加減した英語」の中であれば、特段の不都合はない。
しかし、彼らの世界の中で、彼らと同じ土俵に立ったとき、自分はどこまで「通用するのだろうか?」というのは、本音のところではわからない。

恐らく、五分五分だ。

アメリカ人の中で、アメリカ人と比較される競争社会。
恐らく、始めは負けばかりだろう。
それで挫折してしまう人もいる。

うーん。
超微妙。
自分はどうだろうか?
お前はどうなんだ?

一朝一夕で突然成長することなんてない。
だからこそ、ある程度覚悟しておかなければならないのだろう。

答えは簡単だ。
自分の気持ちを、
心構えを整える。
そして、ベストを尽くす。
それだけだ。

なんだかスポーツ選手みたいなことを言っているな、と思う。
だが、しかし、結局根本のところは、スポーツと同じなのだ、とも思う。
(だからこそ、スポーツがこんなにも人の心をつかむのだろう。そういえば、2014年9月6日、錦織圭が、日本人というか、アジア人初のUSオーブン決勝進出を果たした(!)実はベスト16に進む試合は、アメリカで観ていた。と言っても、テレビだけれど。それでもリアルタイムだった。世界4大大会におけるベスト16進出は日本人としては96年ぶり、ベスト8進出は92年ぶりらしい。そして、決勝進出は、アジア勢初。なんという素晴らしさ。彼の「粘りのテニス」は、心を打つものがある。決してサーブが速いわけではない。「Marathon man」と言われるように、彼は長期戦に強い。なるほど、そういった点でも見習いたいなと思う。また、ボクシング、フライ級の八重樫の試合。こちらは負けてしまったが、それでも心を打つものがあった。彼は王者で、挑戦者を迎え打つ立場だったが、相手は、3階級制覇を狙う天才ローマン ゴンザレス。素人目に見ても、明らかに次元の異なる相手に、八重樫は、戦いに戦い抜いた。テクニックで勝てないと判断すると、打ち合いを選び、本当にふらふらになるまで戦い抜いた。その姿勢は、闘志そのもので、がんばれ、がんばれ!と応援せずにはいられなかった。八重樫は負けた。しかし、観客は惜しみない拍手を送った。僕は、別にボクシングのことは詳しくないけれど、これが特別な試合であることは理解できた。そして、八重樫という選手を覚えることになる。一つ下の彼に、心から敬意を表したい。)

気持ちがあって、
心があって、
努力をする。

このシンプルな連鎖を、丁寧に、本気でやる。
これは、スポーツでも、仕事でも、人生でも、全部に言えることなんじゃないか?
そんな風に思っている。


最近、自分の中で、「グローバルに通用するもの」は何だろうか?と考えている。

例えば、アメリカには日本人の美容師が少ない。
その現状を知り、「もし日本人の美容師がいれば、間違いなく通うのだが」と思ったとき、なるほど「美容師の技術は、国を超えるグローバルなものなのだな」と思った。
もちろん、顧客はアジア人が多くなるのかもしれない(その意味でどこまでグローバルかという議論はあるにせよ)が、少なくとも「髪を切る」その動作は、どんな国であっても再現可能であり、その点でグローバルなのだ。

また、経済から見ても、少なくとも、日本人コミュニティーがある地域においては、日本人美容師は確実に生き延びることができる。

例え言葉に問題があっても(英語が片言であったとしても)、日本人コミュニティー、韓国人コミュニティーなどに知られれば、安定的な顧客を見込むことができるからだ。
(なんせ、アメリカの美容師には、直毛をカットする技術がない。変な角刈りになる。そのことを分かっている日本人駐在員は、日本人に切ってもらいたいし、その人数は一つのマーケットを形成する。日本人美容師のみなさん、Come on!)

さて、上記のようなことを考えたとき、美容師の仕事の大半は、「非言語の技術」で構成されていることに気づく。
この点でスポーツや音楽に近いと言えるだろう。
そして、スポーツや音楽に国境がないように、美容師の技術にも国境はないのだ。
従って、彼らの職能は、グローバルに通用する、ということになる。


さて、翻って、自分はどうだろうか?
英語は、通用すると胸を張って言えるほど大したレベルではない。
(入り口に手をかける資格くらいはあると思うが)

臨床試験の知識も、国が変われば、規制も変わり、ビジネス習慣も異なる。
(もちろんベースの部分では、共通であるが)

そうなってくると、後は、「一生懸命さ」「勤勉さ」「仮説思考」という、本当に根本の部分しか残っていないことに気づく。

これは大変なことである(!)
まるで、一回生まれ変わるような、そんな変化と言ってもいいかもしれない。

しかし、だ。
言わせてもらおう。
これこそ、自分が望んでいたことなのだ。

繰り返す毎日、
刺激の少ない日々、
退屈な時間。
そんな時間を吹き飛ばすような刺激を!

安寧の日々から、
激動の毎日へ。
やってやろうじゃないか。

まずは、できることを一生懸命しよう。
初めはバカにされるかもしれない。
恥ずかしいことなんてたくさんあるんだろう。

・・・ちくしょう。
今に見てろよ。

僕は、いつだって、負け犬からのスタートだ。
そう思ってきた。
静岡の片田舎で、ちくしょう、とつぶやいていた頃から、
僕は変わっていないことに気づいた。
そうだ、そうだ、そうだった。
これこそが、自分のスタイルだ。
負け犬であり、挑戦者だ。

負け戦、最後には絶対勝つ。
これが、僕本来の信条である。


のんだ