2012年12月16日日曜日

148. 5→6

先日、Canon EOS 6Dを購入した。
これまでEOS 5D mark IIをメイン機種として愛用してきたが、今後は6Dへと引き継がれることになる。

EOS 5D mark II
2008年の発売から4年近くハイアマ向けフルサイズ機として活躍してきた銘機。
僕は2010年から使っている。


EOS 6D
2012年11月30日、廉価版フルサイズ機として、フルサイズ入門者向けに作られた新たなライン。


なぜ今、6Dか。

  • 子供が生まれ、室内での撮影が増えた(新生児は1ヶ月間外に出られない)。
  • 最近、マクロ撮影を始めるようになった(EF 100mm f/2.8 L)。
  • このため、暗所での撮影に強い機種が欲しくなった。


ということが挙げられる。

所有している5D mark IIは暗所での性能以外はほぼ満足しており、ISO 1250までなら作品づくりにも使えると思っている。しかし、ISO 3200から画質の劣化が激しく、そして、室内×マクロの場合、ISO3200は常用感度となる。

結果として、高感度性能重視で、新機種を導入することとした。



さて、Canonの製品ラインナップを整理すると、5Dは6Dの上位ラインにあり、最新機種としては、5D mark IIIがある。
なお、全体としては、1D X > 5D III  > 6D (ここまでフルサイズ) > 7D > 60D > Kiss というラインナップになる。

さて、価格面では、ざっくり言うと5D mark IIIは最安価格で、26万円。6Dは16万円と、10万円の価格差がある(2012年12月16日現在)。

対して、高感度特性(高感度撮影時のノイズの少なさ)は、ざっくり言えば、両者で同等。レビュー結果によっては、6D > 5D mark IIIという下克上な報告もある。これは単純に画素ピッチが6Dの方が広いためだろう。

5D mark IIIと6Dの最も大きな違いは、AF性能。
6Dは、低輝度AF性能が優れているが(-3EVまで可能。5D IIIは-2EV)、測距点の数、クロスセンサーの数で、いずれも5D mark IIIが圧勝しており(というのも、5D IIIはさらに上位のフラッグシップ機1D XからAF機構を引き継いでいる)、AFを重視する人には間違いなく5D mark IIIとなる。

しかし、である。
僕の場合、基本的に中央一点のみのAF利用で、コサイン誤差は許容するというスタンスだ。(コサイン誤差というのは、中央1点で焦点を固定した後、構図を変えた場合、構図を変える際に生じるカメラの回転(角度θ)によってcos θ分だけ、ピントがズレるというもの。気にする人は気にするし、厳密なピントを求めるなら正しいスタンスだと思う。)

僕にとっては、むしろ、「より近いものにピントが合ってしまう多点AF」の方が、こちらの意図を解されず使いにくいと思っている。(例えば、木陰の向こう側にいる猫にピントを合わせたくても、より近い葉っぱにピントが合ってしまうなど。例え測距点が増えても、視線入力でもない限りこの問題は解決しない。)

また、5D IIIにない機能として、6DにはGPS機能(ジオタグ)とiPhoneを使用して撮影する(背面液晶をWi-Fiで共有し、ライブビュー撮影を行える)機能も追加となった。また、重量もかなり軽くなり、大体EOS 50Dと同じくらいだ。これはペンタプリズムのある一眼レフとしては驚異的な軽さだ。やればできるじゃないかCanon。

もちろん、6Dには視野率が97%であったり(5DはIIでも100%だし、ペンタックスでは普及機であっても100%だ)、最高シャッタースピードが1/4000であったり(5D IIでも1/8000)と見劣りする部分もある。しかし、色々と頭の中で機能の拮抗を計算した結果、それでも6Dの存在価値はあるものと判断した。

その中には、以下のような局面を意識した理由もあった。
少し長くなってしまうが、メモしておく。

現在のCanonの撮像センサーは、プロセスルールが古く、全体的にSONY製センサーに劣ってしまっている。

Canonは自社製センサーにこだわり、その姿勢はよいと思うのだが、プロセスルールを新しくしようとすると、半導体製造設備を刷新することになるので、巨額の設備投資が必要になる。このため、その経営判断には時間がかかるし、はっきり言ってここ数年は、あまり積極的に投資はしていないものと思われる。(マイナーチェンジを繰り返しつつ、メジャーチェンジは控えているという状況)

一方、SONYは自社のカメラ以外にも、ニコン、OLYMPUS、ペンタックスにセンサーを外販しており、それそのものがビジネスになっている。この結果(と思われるが)、プロセスルールの刷新が早く、結果として、SONYセンサーを搭載したモデルはダイナミックレンジに優れ、大ヒットしている(好例:Nikon D800, D800E, OLYMPUS OM-D,ペンタックスK-5, 5II, 5IIs これらは、2012年を代表するカメラとなるだろう)。

撮像素子の性能を比較しているDxO mark scoreを見ると、それがよく分かる。


出展:デジカメinfo
http://digicame-info.com/2012/12/dxomarkeos-6d.html


出展:デジカメinfo
http://digicame-info.com/2012/09/dxomarkd600.html


残念ながら、Canonの機種はフラッグシップの1D Xを含め総合スコアで82止まりである。
一方、Nikonは96というあり得ないスコアまで出ており、近年発表した機種は全て90以上のスコアをマークしている。

DxO Mark scoreは、画素数が大きい程結果がよくなる傾向があり、この数値をそのまま信用するのは危険だとも言われている(特に熱心なCanonファンから)ので、鵜呑みにしない方がいいかもしれないが、それでも全く無視することもないだろう。

いずれにせよ、一般的に言われているのは、「Canonはここ数年センサー性能が伸び悩んでいる」ということだ。
5D Mark IIがスコア79で、最新のMark IIIが82では悲しくなってしまう。

しかし、その分、画像処理エンジンのDIGICの開発には力を入れており、撮像素子では負けているけれど、その出力(JPEG)では何とかライバルにくらいついている。

整理すると、

撮像素子・・・光の情報(輝度、色)をデジタル変換
RAW画像・・・DxOではここを計測。結果、Nikon > Canon
画像処理・・・ここがGICICによる処理
JPEG画像・・・優れた画像処理により、高感度(ISO6400〜)ではややCanon > Nikon

というかんじなのだ。

素子が負けているのに、JPEGでは追いつくというのはある意味すごい。
しかし、やっぱり素子は負けているのである。

恐らく、Canonは次のフルサイズラインナップ(大体3年〜4年周期)で、プロセスルール自体を変更して、素子からのレベルアップを図ってくるはずだ。高感度だけではなく、低感度でのダイナミックレンジも改善してくるだろう。また、高感度一辺倒な戦略を見直し、D800に対抗する高画素機も投入するだろう。

その時、SONYセンサー搭載のNikonとどう戦えるかが、天下分け目の合戦となるだろう。(そのときには、もしかすると、SONYがさらに飛躍しており、三国志のような三つ巴の戦いが巻き起こっているかもしれない。もしくは、場外乱闘扱いだったミラーレス市場がさらに支配的になり、戦場自体が移っている可能性がある。その場合、圧倒的にSONY>Canon、Nikonとなるだろう。SONYには合戦場自体を変えてしまう可能性があるので、頑張ってもらいたい。)

上記のような大局観に立った場合、現在のラインナップは、そのときまでの「つなぎ」としてしか考えられなくなる。

これは、Canonのビジネスモデルと経営判断から生まれた必然的な状況で、一カメラファンとしてはどうしようもないものだ。
結果として、僕の判断は、「今は廉価版で様子を見て、3年後につなごう」というものになった。

と、色々書いてきたが、「今買う」という条件の中で、「Nikonに行く」という選択肢を捨てるとすると(これはレンズ資産がそこそこある僕としてはなかなか取りにくい選択肢だ。何より、レンズの赤いラインが好きだ。Nikonが金色のラインをやめたら行く気も起きるのだが、金色のラインはどうしても好きになれない。ここは非論理。感性の問題だ。そして、結局カメラも写真も感性がモノを言う)、あと残るのは、5D mark IIIと6Dの価格差と性能差のバランスということになる。そして、前述の通り、5D IIIは機能面での完成度が高いが、10万円の差を肯定するまでではない、という判断となった。

さて、6Dは12月12日に159800円で、銀座のチャンプカメラにて購入した。
直後の12月13日には165000円に値上がりしたので、底値で買えてよかったなと思う。
スマートフォンがあると、値動きを逐一チェックできて、買い時が分かりやすい。
(多分、冬のボーナス需要を当て込んで大量仕入れした店が12日時点で在庫を売り切ったのだろう。結果、5000円程の上昇となった。)



現在所有している5D IIは139800円で販売されているので、6Dは販売から僅か半月で2万円差まで値が下がったことになる。フルサイズに価格破壊が起こっていることをひしひしと実感してしまう。
同じく廉価版であるNikonのD600は大体16万2000円くらいなので、それよりも機能的に劣っている6Dは安くなければいけないと思っていたが、ちょうどよく15万台まで下がったので、購入を決めた次第だ。

ちなみに、ヨドバシカメラでは198000円なので、4万円ほどの差がある。
ポイント還元を考えても、2万円程の差だ。
同じ東京で買うのに、ここまで差が出てしまうとは、カメラの購入とは難しいものである。ヨドバシはカメラの周辺機器やフィルムなどでよく使っているのだが、価格差が出やすい大きな買い物となるとなかなか使いにくい。ヨドバシとしても業態の異なる卸売り業者のような激安販売店と競争を強いられるのは辛いだろう。

しかし、ネットの普及やスマホの普及はこういった業態の異なるもの同士がライバルとなる世界を実現させてしまった。この世界の中で、最適な者が生き残る。在ったはずの壁がなくなり、世界はより競争的になったと思う。Canonにせよ、ヨドバシにせよ、頑張ってもらいたい。