2014年1月3日金曜日

170. 2013年を振り返って(カメラのこと)

2013年のカメラ事情を簡単に振り返ってみたい。
なお、既にプロの方々が、詳細なレビューやメーカーへのインタビューを行っているので、しっかりした情報がほしい人は以下のサイトを参照してほしい。ここでは、素人の戯れ言を書いておこうと思う。

全般的な情報は以下が参考になる。

デジカメウォッチ メーカーインタビュー2013 導入編(本田雅一氏)
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/interview/20131127_625386.html

山田久美夫氏が語る「今年印象に残ったデジタルカメラ2013」
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/special/20131231_629566.html


また、各社へのインタビューは以下の通り。ここでは勝手にカテゴリー分けをしてみた。

【フルサイズミラーレスを実現した革新的企業】
デジカメウォッチ メーカーインタビュー2013 ソニー編
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/interview/20131218_628063.html

【ミラーレスへのトレンドを積極的に取り入れている企業】
デジカメウォッチ メーカーインタビュー2013 オリンパス編
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/interview/20131205_626374.html

デジカメウォッチ メーカーインタビュー2013 パナソニック編
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/interview/20131210_626875.html

デジカメウォッチ メーカーインタビュー2013 富士フイルム編
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/interview/20131217_627920.html


【ミラーレスに消極的な一眼レフ老舗企業】
デジカメウォッチ メーカーインタビュー2013 ニコン編
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/interview/20131216_627805.html

デジカメウォッチ メーカーインタビュー2013 キヤノン編
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/interview/20131209_626786.html


【APS-C一眼レフ島に残って頑張っている企業】
デジカメウォッチ メーカーインタビュー2013 リコーイメージング(リコー&ペンタックス)編
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/interview/20131225_628900.html



2012年12月30日の記事で、2013年には以下のようになるのではと予想していた。
半分当たって半分はずれたかんじだ。


  • キヤノンとニコンはフルサイズ機は出さず、APS-Cのハイエンドモデル(高速連射機)を出すかどうかが焦点:➡見事にはずれた。結局二社ともに出さなかった。ニコンに至っては、フルサイズのDfを発表。これには驚いた。
  • ソニーはフルサイズミラーレス機を第一優先としているはず:➡これは当たり。ただ、もう少し遅い発売かと思っていたので驚いた。
  • ペンタックスはなかなかフルサイズを出さない。APS-C路線堅持の模様。➡これも、残念ながら当たってしまった。その上、2014年もこのままになりそう。
  • リコーが大人しい。どうした?➡撮像素子をAPS-Cにまで急拡大したGR後継機を発表。面目躍如。


2013年を個人的に振り返ると、まず一番に思われるのが、

「1.フルサイズ機の価格破壊の進行」

だと思う。
既に2012年に発売されたニコンD600とキヤノンEOS 6Dによって価格破壊は進行していたのだが、さらにソニーのフルサイズミラーレス機α7によってその価格帯が鮮明になった印象を持っている。
今、フルサイズは12〜14万円台になっている。
(価格.comでボディーを見ると、現在、α7は127,823円、D600は139,229円、6Dは143,689円)

これは、APS-Cの中・上級機クラスの価格だ。これで利益が出るようになったのだから、すごい時代になったものだとつくづく思う。
僕の感覚では、フルサイズ機といえば25万円くらいが相場で、安くなった旧型で20万円を切るか切らないくらい。(これが5D MkIIを導入しようとしていた2009年の相場感だった。)

わずか4年で10万円程安くなってしまった。

もはや、「気軽にフルサイズ」の時代になってしまったように思える。
これは、以前にも書いた通り、「スマートフォンによるデジカメ市場の浸食に端を発したドミノゲーム」が原因だと思うのだが、それにしても、安くなったなぁと感心してしまう。

さて、こうなってくると、APS-Cの高級機がしんどくなってしまうのだ。
これも1年前から変わっていないトレンドだが、ここまで価格が明確にかぶってくると、いよいよ消費者の選択にモロに現れてくると思う。

好例がペンタックスのK−3だ。
現在、価格.comで 11,8382円。
あと1万円出せば、歴史的&記念碑的α7が買えてしまう。

もちろん、K−3がカメラとして持っている他の優れた機能、例えば、ニコン、キヤノンが出さなかったAPS-C高速連射機としての十分な(現在APS-C最強の)スペックを誇ること、SR(Shake Reduction:撮像素子を振動させ手ぶれを軽減させる技術)を応用して擬似的なローパスフィルターを実現した技術的なブレイクスルー、それによってローパスレスとなり先鋭感の高い画像が得られること等は承知している。

それは非常に素晴らしいのであるが、それでも、レンズ交換式カメラは「レンズ資産」を考えずにはいられない。
ペンタックス機でレンズを揃えてしまうと、APS-C専用のレンズしか手元に残らない。

今後もずっと、ずーっとAPS-Cで行くのかぁと思うと萎えてしまう。
(注意:僕は撮像素子のサイズを、多分一般的な人よりも重視してしまう傾向にあるのでバイアスがかかっていると思う。なので、その点を差し引いて考えてほしい。)


ここで言いたいのは、
「フルサイズ廉価機とAPS-C高級機が勝負する時代になった」
ということだ。

もちろん、手に持った質感は高級機として作り込まれたAPS-C高級機の方が高い。
僕は6Dユーザーなので正直に告白するが、この機種は「持つ喜び」には恵まれていない。ただ、一方で撮影の道具として考えた時、やはり「フルサイズ素子に裏打ちされたボケ感、高感度耐性、トリミング耐性の高さ」は好ましい。結果、手放させない。

そして、レンズ資産のことも併せて考えると、「発展性」という点でどうしてもAPS-C高級機路線のみを続けるのは限界が見えているように思える。

さて、この話が一番関係しているのはペンタックスだ。
しかし、上記のペンタックス編のインタビューを見てもらえれば分かるのだが、フルサイズは「開発中」であり、まだ本腰が入っていないようである。3年前から全く変わっていない。

2012年頃からずっと書いてきたのだが、ペンタックスはフルサイズに対応したデジタル専用のレンズを持っていない。このため、フルサイズ機を出すにはレンズを一からやり直すなければならないし、結果、損益分岐点が非常に遠い。この障壁が大きすぎてなかなか踏み出せないのだろう。

また、もはやペンタックスはリコーイメージングという企業の一部門(一ブランド)に過ぎない存在になっている。この一部門にそんなに莫大な投資をできないという経営層の判断も働いているのだろう。

心中お察しします、とは思う。
しかし、元ペンタックスファンからすると、そろそろ決断しないとやばいよな、と思う。


さて、2013年を振り返ってもう一つ思うことがある。


「2.ミラーレスにすると、デジタル一眼はスマートになる」


ニコンDfは明確な懐古主義的デザインを纏っており、個人的に好ましいのだが、しかし、いざ手にしてみると「厚ぼったい」印象をどうしても抱かざるをえない(そして、妙に軽過ぎる)。
せっかくデザインをこだわったのに、何かにつまづいてしまっている感を感じてしまう。


一方、ソニーのα7、α7Rは、デザインでずっこけている(特にペンタ部)のだが、それでも、本体の薄さ、手に持ったしっくりとくる感において、賞賛されるべきものを持っている。(なお、デザインのいびつさについては、持っているうちに気にならなくなるらしい。)

そして、最後に思い出されるのが、オリンパスのOM-D EM-1だ。




μフォーサーズとフォーサーズを統合した(事実上、フォーサーズからの撤退を決定付けた)モデルで、プロ向けを謳うだけあって、ボディーの質感は非常に高い。僕は今年握ったカメラの中で、その質感に感心したのは、このEM-1と同じくオリンパスのPENシリーズのハイエンドモデルE-P5だけであった。

μフォーサーズという撮像素子の小ささはとりあえず置いておいて、これら質感の高さ、納まりの良さを実現したカメラに共通しているのは「ペンタプリズムのない、ミラーレス機」という点だ。

つまり、ミラーレスにすることで、ミラーボックスの呪縛から逃れることができ、結果として、スマートなデザインを実現できるということだ。

その代わり、懐かしのOVFは失うことになる。

しかし、OVFの「見え味」なんてAFが搭載され始めた90年代から衰退の一途を辿っているではないか、という気もする。今、70年代、80年代のMFが当たり前だった時代のフィルムカメラのファインダーを覗くと感動を憶えてしまう。
広大な視野。見えるピントの山。そんなOVFの良さはとうの昔に失われてしまった(これはフルサイズ機であっても)。

今OVFには、「EVFよりも動体に適している」、「目が疲れにくい」、くらいしか訴求点が残っていない。

僕はまだEVFよりOVFの方が好きだが、それでも、やがてEVFに変わる時代が来るだろうなと思っている。
現在、EVFは240万ドット弱だが、これが1000万ドットを超える時代になったらどうだろうか?
しかも、タイムラグやちらつきが今の100分の1になったらどうだろうか?
露出補正した結果が確認でき、ピーキング表示が容易に行えるEVFの優位性は保ったままだ。
こんな時代、あと5年でやってくる(と勝手に予想)。

さて、以上の二点から思うことは、

ペンタックスは、5年後の世界を目指して、今、KマウントとOVFを捨て、新しいフルサイズミラーレス路線を打ち出そう。

ということだ。
なぜか?

まず、既存のKマウントはもともとはフィルム時代の規格なので、フルサイズ素子を入れることが当然できるのだが、ミラーボックス分のフランジバックが確保されているので、どうしても「あつぼったい」機種にしかならない。
(フィルム時代はそれでも、フィルムが入れば成立したので薄く仕上げられたが、デジカメ時代の今は液晶と回路、それからAFのモーター等が入ってどうしても厚くなってしまう)

KマウントかつOVF堅持路線は、つまりフルサイズ一眼レフ機の開発を意味しており、その市場には既にキヤノンとニコンがいる。

真っ向勝負して勝てるわけがない。相手はプロ市場に牌を持つ二大企業だ。プロ向け機材にまで手が回らないペンタックスには勝機は微塵もない。

ペンタックスの良さは、カメラとしての質感の高さ、価格対性能のバランス、カメラ然りとしたデザインセンス、エントリー層への開かれた門戸だと思う。

この良さを最大限に生かすには、フルサイズ×ミラーレス×EVFの組み合わせが最適と思う。この組み合わせで、かつ、往年の銘機「LX」のテイストを忠実に、極めて忠実に現代に蘇らせれば、かなり注目を集めると思う。

この路線には、強力なソニーがいる。
しかし、まだキヤノン、ニコンよりはマシだ。フルサイズ×ミラーレス×EVFは、もろにα7シリーズとかぶってしまうが、それでも、ペンタックスには分があると思う(今このようなことを書くと単なるα7の模倣のように見えてしまうのだが、元々この発想はα7が姿を見せる前からこのブログでも紹介していた。なので、僕としてはこの状況を「言わんこっちゃない」と感じてしまう。せっかくペンタックスが一番になれるチャンスだったのに)。ペンタックスのカメラとしての生真面目な作り込みは、まだ鼻差を付けるだけの力を秘めている。(と僕は信じている。これはペンタックスという企業に対してというよりも、熱心なカメラファンの良心を信じていると言ってよい。)

どうせ、Kマウントを堅持してフルサイズ機を作ったって、フィルム時代の設計のFAシリーズしかないのだ。
OVFを堅持してしまうと、コストがいつまで経っても下がらない。
その上、OVFを堅持したままでは、デジタルの宿命で、仮にLXを模倣したとしても、ミラーボックスとペンタプリズムで、ニコンDfのように肥ったボディーになってしまい、デザインをスポイルしてしまうのは明らかだ。

というわけで、

ミラーレスフルサイズ機「LX-D」

をペンタックスには提案したい。
カラーバリエーションをやるなら、この機種でやるべきだ。
ガンメタやチタンモデルも出してみよう。木製グリップを付けて、シニア層に訴求してみよう。Kマウントユーザーへの不満には、純正のアダプタープレゼント(同梱)で回答しよう。APS-Cレンズユーザーにはクロップモードで対応すればいいじゃないか。EVFならクロップも容易だ。

まずは、広角、標準、中望遠の単焦点と、伝統の40mm付近のパンケーキから始めたらいい。ついで、少し暗め(F3.5 - 5.6)の標準ズーム。とりあえずこれで2年くらい誤摩化そう。

ここまでやれば、拍手を送りたい。
が、多分やらないだろうなぁ。

こんなことができそうなのは、現状、富士フイルムしかないなぁと思う。