2009年4月25日土曜日

021. 出発前夜


と言っても、日付が変わってしまった。
ということで、出発「当日」である。
今年はペルー&ボリビアの12日間の旅だ。
マチュピチュはもとより、ウユニの白い大地がとっても楽しみだ。
高山病や、強行スケジュール(現地9日間のうち3日間深夜バス移動)、強盗や偽警官、などなど、不安な事もあるが、とりあえず、気を引き締めつつ楽しんできたい。

さて、最近ふとした拍子に(例によって徒歩での通勤中に)大きなアイデアが浮かんできた。
それは、

「三年かけて、世界三周旅行」

というものである。

計画はこうだ。
55歳までに、がっつり稼ぐ。
早期退職で、退職金をがっつりゲット。
世界1周旅行券(大体50万〜70万)を購入。
1年かけて、世界を一周。
もう一年かけて、世界を一周。
さらにもう一年かけて、世界を一周。
3年間、旅をし続けるのである。
これだけ長くなると、旅は日常となり、僕はまるで現代の遊牧民のように浮遊した点となるだろう。

世界一周旅行、というのは僕の夢だ。
そして、実に多くの人がその夢を達成している。
ネットで見る限り、大体3年間くらい旅をしている人が最長のようである。
そういった人たちは、世界一周旅行券ではなく、現地での航空券の買い足しで旅をしているようである。
それもいいと思うが、僕はどうにか世界一周旅行券を使いたい。
別にたいした理由はなく、ただ、なんとなくお得な気がするからだ。
しかし、世界一周旅行券は、期限が1年間。
すると、三年間、世界一周旅行券で旅をし続けるには、地球を三周する必要がある。

「それなら、世界三周しちゃえば?」

と思いついたのである。
その、あまりに短絡的で突飛なアイデアに、思いついた瞬間、我ながら苦笑してしまった。
しかし、こうも思った。
さすがに世界を三周もすれば、行きたいところのほとんどは回れるのではないだろうか?
国という国に、足跡を残せるのではないか?
僕の1Lほどの小さな脳内(それこそ70億分の1の世界)に、世界という世界が、コンパクトに格納されるのではないか?

それは、ぞくぞくする想像だった。


この総費用は、ざっくり言って1200万円。
都心で小さく古いマンションを買うくらいの額だ。
確かに大変な額だけれど、
それをさっ引いても、恐らく老後に困るような状況ではないと思う。
(結婚していない、または子供がいない、大きな買い物をしていない、という前提で。この前提がもろくも崩れ去る可能性はあるが。)

55歳、という年齢はまだ身体が動くだろう、という見込みで考えている。
55歳〜58歳までの三年間で、人生の集大成のような旅をしたい。
僕は今、27歳。
これから30年近く先の話ではある。
しかし、そんな人生の終わりの方に、ある種のボーナスがあってもいいのではないか?と思うようになった。

僕の人生に、あえて目的を付けるなら、それは「世界を存分に堪能すること」だ。
今はまだ、GWくらいしかまとまった旅行時間は取れない。
世界一周をやろうと思えば、実はすぐにでも実行できるだろう。
会社を辞めて、有り金を全て動員すればいい。
しかし、今の仕事にやりがいを感じているのも確かだ。
今は、やめられない。
今は、やめたくない。


僕にはもう一つ夢がある。
アメリカの支社に赴任する事。
それは今の仕事の延長線上にある。
そして、まだまだ希望はあると思っている。
その夢が叶えられるとしたら、恐らくそれは僕が35歳〜40歳くらいになってからだ。
社内の体制や、海外で求められるポジション、等々を考慮すると、どうしてもそれくらいかかってしまう。
それが、初めは嫌だった。
もっと早く出たかった。
出られるだけの能力はある、と闇雲に思っていた。
しかし、と今は思う。
僕はまだ、そのポジションに見合っただけの経験がない。
知識もない。
判断力もない。
専門性もない。
それを身につけるには、じっくりと時間をかけて、極めていく、追い込んでいく必要がある。そして、その過程のひとつひとつが、僕には今や有意義に感じるのだ。
何より、そのステップが楽しくてたまらない。
だから、僕は焦らない。

どうやら、僕の夢は二段ロケットの様相を示してきたようだ。

40歳までに海外へ赴任する。
55歳から地球三周の旅に出る。

これは、僕が僕だけの人生を歩む事を前提とした、極めてパーソナルな夢だ。
ある意味、孤独と引き換えに手に入れる幸せ、と言っても過言ではない。
その先に、どんな未来があるのかは、分からない。
でも、少なくとも、今27歳の僕は、この想像にとてつもなく大きな魅力を感じている。
恐らく、一個人の理想の実現という意味で、純粋かつ究極の形だと思う。

これから僕は南米に向かう。
スペイン語が必要だ。
今回の旅をなんとかできればいい、という発想だとスペイン語の勉強などする気になれない。しかし、いずれやってくる、「世界三周」のための下ごしらえだと思うと、俄然意味合いが変わってくるのだ。
恐らく今後、毎年1回の海外旅行は、その下ごしらえの一端として認識され、機能するはずである。
また、体力作りも欠かせない。
今の徒歩通勤もそうだが、身体を常日頃から充実させておく必要がある。
タバコも出来る限り少なくした方がいい。
酒も、やり過ぎはだめだ。
太りすぎない方がいい。
健康にいいことは、全ていいことだ。
なんせ僕は55歳から旅に出るのだから。

人生のあらゆるパーツが、組織化していく。
収斂していく。
そんな漠然としたイメージが、僕の意識をよりはっきりとさせている。

さて、南米へ向かおう。