2012年1月4日水曜日

108. 2011年〜2012年(結婚式と北京旅行)

>みなさま
 あけましておめでとうございます。今年も、どうぞよろしくお願いいたします。
2012年1月4日 管理人カジ
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さて、2012年もいつのまにやら4日目である。というのも、昨日まで北京に旅行していたためだろう。旅行は、インプットの情報量が多いので、そっちにメモリを使ってしまい、時の移り変わりにはその分鈍感になりがちだ。
北京では、奇妙なことに、新年になっても「メリークリスマス色」が抜けていなかった。どうやら、「新年」と「クリスマス」がほとんど区別なく「なんとなく楽しいイベント」という位置づけのようである。
これは、恐らく、旧暦に基づいて新年を祝う習慣があるからだろう。旧暦だと、1月末〜2月にかけて新年を祝うことになる。もちろん、カレンダーでは西暦を採用しているから、1月1日が2012年の始まりであることは中国でも間違いないのだが、いわゆる「年末年始」のイベントは旧暦に従って行われる。
これは、同じく旧暦を採用するタイでも同じで、タイではもう少し12月の年末と1月1日の新年を祝う雰囲気はあるのだが、やはり12月25日を過ぎてもクリスマスムードは抜け ず、1月になってもちらほらとサンタ姿を見かけることができる。

さて、北京旅行の所感をざっと振り返っておきたい。北京に訪れるのは今回が初めてで、これまで中国は、香港と桂林には行っていたのだが、首都である北京では、その経済の発展振りを多いに感じることができた。
・まず、ビルが、道が、超でかい。12車線の道路があったり、何気ない道路でも8車線は当たり前だ。また、ビルのサイズが日本とは比べ物にならない。大陸の文化(見栄の文化とも言われる)なのだろうが、六本木ヒルズライクなビルがぼんぼん立っている。「国貿」という駅の周辺には富裕層と外国人向けの大きなショッピングモールがたくさんあるが、その雰囲気は六本木ヒルズやミッドタウンのようなハイセンスなもの(欧米チックなもの)で、グッチやシャネルやディオール、D&Gやモンブラン、その他一般的に高級と言われるブランドが一通り揃っている。また、その店舗のサイズも、ビルが大きい分だけ立派で、日本ではちょっとお目にかかれない規模だ。(万年筆で有名なモンブランだが、それ専用の展示ブースが常設されていたり、日本では小規模な展開の欧米ブランドが、大きな店舗を構えていたりと、高級品の充実振りは目を見張るものがある。日本で三越が中国富裕層向けに、接客対応を充実させる理由がよく分かった。こんな所でショッピングを楽しむ人であれば、三越のような百貨店でなければ満足しないだろう。というよりも、銀座や日本橋の三越でさえ、「Too small」な印象さえ持たれてしまうのではないか。)
・そのような経済発展の華がきらびやかに咲くすぐ傍で、昔ながらの胡同(フートンと読む。言ってみれば「下町の細い道/区域」のようなもの)がそこかしこに点在し、今も昭和の街並のような雰囲気が漂っている。超高層ビルのエリアから2駅でも離れると、平屋作りの家が並び、夜1人で歩くにはちょっと怖いくらいだ。僕たちは、地上80階にある「The Lounge」というカフェで中国茶を飲んだその日の夜に、今度は夜の北京の下町を散策し、その落差(貧富の差)に唖然とした。こういう落差が一つの街に隣り合わせで存在しているのが特徴と言えるかもしれない(と言っても北京市だけで、16800キロ平方メートルもあり、日本で言えば、大体「四国」と同じくらい(正確には四国は18806キロ平方メートルで少しでかいが)ということを考えれば、不思議ではないのかもしれない)。
・冬の北京は寒い。毎日、-7℃〜+1℃くらいの間である。しかし、きっちりとした防寒をすれば、観光することは可能だし、秋の行楽シーズンには中国人観光客でごった返すことで有名な万里の長城も、閑散とした雰囲気で(まぁ雪が降っていたくらいなので)、長城をきっちりと写真に収められる。
・今回のアクティビティーは以下の通り。
万里の長城(慕田峪長城の方。世界遺産)頤和園(いわえん、北京最大の庭園。西太后が愛した庭で世界遺産)川底下村(せんていかそん、昔ながらの四合院造りの建物が並ぶ山間の村)雑技観覧(朝陽劇場)京劇観覧(梨園劇場)天壇(明清時代の皇帝が祭祀を行った祭壇。世界遺産)現地中国人から世界一うまいと太鼓判を押された小龍包屋(大望路の新光天地ビル内にある「鼎秦豊」という店)現地中国人おすすめの北京ダックの店「鴨王」
・今回は、ANAの溜まったマイルで飛行機を取ったので、行き帰りの往復はほとんどかかっていない。特に帰りの便では、エコノミーの座席が満席になってしまったことを受け、追加料金なくビジネスクラスにアップグレードしてもらえた。これはラッキーである。日本酒は、栃木の地酒「開花」の純米酒だった。うまし。
・体重は65キロから67キロにアップグレード。結婚式に向けて落とした体重を見事に取り戻しつつある。もともとリバウンド前提でダイエットに取り組んできたのだが、こうも見事に跳ね返ってくると我ながら呆れてしまう。

・体重の増加が物語るように、中華料理はおいしい。もちろん、オイリーであるが、その多彩さには毎回、敬意を感ぜずにはいられない。
・日本が今現在、中国に勝っていると誇れるものは、
「ラーメン」
(中国では、麺がゆるく、また出汁のレベルもまだまだだ。「李先生」という牛肉麺のチェーン店がかなり出店しているが、この麺もいまいちだった。一方、現地中国人がすすめるジャージャー麺の店「京味麺大王」では、もちもちした程よい中太麺だった。つまり、もちもちした食感の麺が喜ばれるのは北京でも同じだが、それが十分には浸透していない様子。日本の有力店にはチャンスではないだろうか。既に熊本の「味千ラーメン」は出店しているようだが(少なくとも空港にはあったし、香港では多数見られる)、もっともっと進出していいと思う)
「ウォシュレット付きの便器」
(是非、TOTOとINAXには、どんどん進出して、中国のトイレ事情を改革してほしい。ウォシュレットそのものでなくても、温かい便座だけでもOKである。北京は寒いし、需要は必ずある。)
「接客サービス」
(富裕層向けの中国のサービスが悪いとは思わないが、逆に共通する部分が多いので、日本式の接客サービスは喜ばれるのは間違いない。その徹底振りを中国人で再現できれば、必ず受け入れられるはずだ。)

・一方で、確実に負けているのが、
「テレビ番組の豪華さ」
(宿泊したHoward Johnson Paragon Hotel では、運良くNHKが映った。このため、紅白歌合戦を見れたのだが、ちょうど時差が1時間あるため、NHKで紅白がフィナーレを迎えた後、1時間ほど遅れて中国の紅白に相当する番組も見ることができた。日本では、紅白は豪華な番組だと思う。特に今年は、バックに大型のディスプレイを配置して、松任谷由美の「(みんなの)春よ来い」では、桜の花びらがCGで舞っていた。それでも十分美しいとは思うのだが、中国の紅白ではそのディスプレイが大体2倍くらいのサイズで、形も円形というか螺旋形というか、不思議な形をしている。ステージの奥行きもすごい。NHKホールのサイズが大きくないという制約があるにしても、豪華さが半端じゃなく違う。日本では、花吹雪が舞うという演出があるが、中国では、美しい衣装を着たダンサーがステージから観客席にかけて宙吊りになって舞っている。AKB48は確かに多いが、中国ではソロの歌手が謳うときでも、何故か50人くらいのバックダンサーが常に踊っている。とにかく、ショーの演出にかける費用に差があるように感じた。言ってみれば、北京五輪のオープニングのような壮大さをテレビでもやっているかんじだ。)
「部屋のでかさ」
(北京は分譲マンションが高騰し、広くは住めないと言っていたが、「最低でも80平米」だそうだ。おいおい、東京や神奈川や埼玉で、「80平米」だったら、「ゆとりの間取り」と宣伝されるレベルだ。)
「人口」
(当たり前だが、それだけの人が働くので、巨大なものも作れるし(つまり巨大な労働力)、それだけの人が消費するので、巨大な市場となる。)

・北京散歩という会社に車のチャーターをお願いした。ここが「当たり」で、万里の長城、頤和園、川底下村と快適に旅行できた。頼んだチャーターのプランは、「日本語が話せない中国人ドライバーだが、意志疎通をしたいときは携帯で日本語通訳と話すことができる」というプランだったのだが、オフシーズンだったこともあり、その一つの上の「日本語ができるドライバー」によるチャ—ターだった。2日間で、キョウさんとリュウさんという二人のドライバーと話したのだが、いずれも日本語が堪能で、運転も丁寧で、日本人の好みがよく分かっている人だった。北京のことも彼らから日本語で教えてもらうことが出来た。
・北京市内の人々の1ヶ月の平均賃金は日本円で4万〜5万円らしい(2800〜3500元)。そのうち、狭い家に住むとしても1000元くらいが住宅費に当てられる。
・こう聞いてしまうと、中国はGDPで日本を抜いたけれども、購買力としてはまだまだだなと思うかもしれない。しかし、中国を見る場合は、「平均値」で語ってはいけないと思う。むしろ、「区分」と「実数」で語るべきだ。例えば、「日本円で年収550万円以上の世帯は何件か?」という「区分」と「実数」で見るべきだ。正確な統計は知らないが、恐らく、日本を既にかなり上回っているはずだ。もしかすると、数倍の数がいるかもしれない。巨大な国なので、そういった「平均のマジック」にかからないように注意すべきだろう。

・中国では、タクシーの運転手や、街にいる人、店員に、英語が通じない。日本並みだと思う。また、マクドナルドというものにも、中国流の漢字名が付いている。スターバックスもそう。Howard Johnson Hotelは北京宝辰飯店である。ベンツにも漢字名がある。ここは中国。中国語で表記せよ、ということだろう。中国語をやる意味はここにある。

・ビールは総じて、薄い。実際アルコール度数も3〜4%のようだ。青島ビールは少し高い方で、ヤンジンビアというさらに安い銘柄がある。ただ、いずれにせよ、満足度は低い。強い酒となると、紹興酒(Chinese Yellow Wineと表記されていて、何かと思ったら紹興酒だった)があるが、瓶で出てくることが多く、飲みきれない。
・北京は総じて平和。天安門近くには常に公安がぞろぞろいるし、地下鉄は入り口に必ずセキュリティーチェックがあり、手荷物のX線検査をしなければならない。おかげで、地下鉄は落書きもされておらず、また照明も明るいので、イタリアのような薄く暗く怖いかんじは全くしない。むしろ、日本と同じ感覚。
・北京のタクシーはぼってくることもある。特に夜の天安門では10元ほどの距離で、1人目は80元と言ってきて、二人目は100元と言ってきた。頭に来て、タクシーはやめて、地下鉄で帰った。地下鉄は1人2元で二人で4元。こんなものである。

冬の北京はとにかく、寒い。ただ、オフシーズンなので、写真的にはよいし、交通も十分機能しているので、案外良い旅先と思った。

さて、順番は前後してしまうが、2011年の12月23日に結婚式を無事終えることができた。
来てくれた友人には本当に感謝である。
籍を入れてから約1年かけてゆっくりと準備してきたのだが、その準備も報われた気がした。というのも、僕たちが気を配ったところを、「誰かが必ず見ていてくれた」ことが分かったからだ。
会場の綱町三井倶楽部、大正時代から続くこの洋館はとても素敵だと思う。外装も内装も、僕たち二人はとても気に入っていた。同じように、この場所をいい場所だと言ってくれる人が何人もいた。
また、料理とワインも二人とも気に入っていた(ワインセラーが有名なところらしい)。当日は、ほとんど食べず、飲めずだったのだけれど、何人かから料理もワインも良かったと嬉しい感想を聞くことが出来た。
給仕の人もしっかりしていると思っていた。というのも、ここは平日は三井系企業の迎賓館として使用されており、相応の対応を常に求められている。このため、接客の対応も安心できる。友人の何人かから給仕さんがとても良かったと教えてもらった。
新婦は、もともと服飾デザイナーだったこともあり、自身のウエディングドレスと、カラードレスを手作りしていた。その製作期間は7ヶ月。パターンから起こし、刺繍のデザインまで自分で考えていた。縫い付けたビーズは1000個を越える。ミシンは稼働させ続けた結果、15年間故障していなかったのにも関わらず、12月になって故障。基盤交換に出し、最後の仕上げはレンタルのミシンで行った。花のコサージュを、友人に協力してもらい、手作りし、それらをドレスにちりばめた。協力してくれた友人は、19人に及ぶ。部屋は7ヶ月間、工房の様相を呈していた。この努力を、きちんと感じ取ってくれる人達がいた。
謝辞の挨拶も、ちょっと涙ぐんでしまったのだが、最終的にはきちんと自分の言葉で自分の気持ちを伝えることができて、よかったと思っている。
そして、写真。友人に頼んだ写真を今見返している。自分の大切な瞬間を、信頼できる友人に撮ってもらえたことは、素直にとても嬉しい。
思えば、私たち二人の出会いも、写真サークル「ニーチ」のおかげであり、写真を通じて人生が豊かになってきたように思う。
私たちは、12月23日から、1日1日と遠のいて行くけれど、写真は、深々とそこに根を下ろし、とどまっていてくれる。
これから、写真を見直すことで、私たちの12月23日を、違った視点からリフレインさせてみようと思う。

小説家の北村薫は、優れた小説の読み手でもある。彼は、「小説を読む、ということは、一度しかない自らの人生への反抗である」と言った。これに倣って言うなれば、「写真を読む、ということは、一度しかない自らの人生への反抗である」

今年も、人と写真とつながっていたい。