2014年10月6日月曜日

186. New Jerseyにて その2

New Jerseyでは、車がないと生活できない、と言われている。
それは、お店が車でしか行けない距離に点在しているためだが、距離だけの問題であればバスを使えばクリアすることができるのでは、と考えていた。
また、お店に歩いていけるくらいの場所に住めばいいのでは、と考えていた。

しかし、どうやらそれだけではないようだ。
僕たちは、River Road沿いにあるHomewood Suiteというホテルに滞在しているのだが、ここから、日系スーパーとして有名なMitsuwaまで歩いて行ってみた。(ここはその昔、ヤオハンというスーパーだったらしい。ヤオハンは、僕の故郷 静岡県三島市にもあり、今となっては懐かしい存在だ。バブル期に海外展開も含めて過剰出店して、結果倒産してしまったのだ。しかし、NJ州では、その後継店が今でも大人気なのである。NJに住んでいる人でMitsuwaを知らない日系人はいないものと思われる。)

大体、25分かかって到着。
写真を撮りながら、1歳児を連れながら、ということで大人一人であれば15分くらいの距離かと思う。
車道にはところどころ切れているものの、歩道がある。
道沿いの店に入ってくる車に気をつけながら、それでも比較的苦労なく、Mitsuwaに到着。

しかし、そこで問題に気づいた。
お店に入ろうと思っても、歩道がお店まで通じていないのだ。
道路から店に向かって伸びているのは車道のみで、歩行者はどこから入っていいのか分からないような造りになっている。
(歩道が道路から店につながっていないため、一時的に車が出入りする車道を、1歳児をつれて、ベビーカーを引いて入る必要がある。とても危険だ)

なるほど、「NJでは、車がないと生活できない」と聞いていたが、それはもはや建物や敷地の造りにまで反映されていることがわかった。
こうなると、車生活を始める以外に選択はない。

会社の規定で、日本人赴任者は必ず運転講習を受けることになっている。
昨日早速受けてみた。

元々、日本でもペーパードライバーで、運転はうまくない方だ。
駐車では5〜6回切り返すのが平均である、と言えば大体程度は知れるだろう。
奥さんの方は、日本で免許をとりたてで、免許取得後に公道に出たのは1度だけという経験値である。

この二人が、15分ほどの説明後、いきなり公道を走ることになる。
まず、日本と比べて勝手が違うのは、

  • 左ハンドルである。
  • 結果、ワイパーとウィンカーのレバーが逆であり、左折、右折するたびに、ワイパーをまわしてしまう。
  • 右側通行である。
  • 結果、左折が対向車線を跨ぐことになり、日本で言う右折と同じような気の使い方になる。逆に、右折は日本の左折と同じで、最小半径で回るようなイメージである。
  • 危ないのは、左折したときで、このとき気をフッと許すと、日本と同じ左斜線に入ってしまい、対向車と正面衝突をするということだ。これをやった日本人がいた、と会社の先輩には聞いている。
といったところだ。
さらに、アメリカ特有と思われるのが、

  • Yieldというルールがある。これは、大きな道路に小さな道路から入るときに、ちょうど高速の入り口のように、道がカーブして接続しているところがある。ここに逆三角形のYieldという表示が出ている。これは、自分の道の方が優先権が低いため(正確には、yieldとは「優先権を相手の道路に譲れ」という意味であり、結果、この標識を見た側の優先権は相対的に合流する道路より低くなる)、合流する道路にいる車の動きを見て、車がいなければブレーキを踏まずそのまま合流していいが、車がいた場合は、徐行して合流するように、という意味である。このYieldの効用は、信号が不要であり、一時停止も車が少ない限り不要であることから、ガソリンと時間の節約になるというものである。ある種の合理性を感じるルールだが、運転が不慣れな自分にとっては、あまり嬉しくないルールだ。躊躇して一時停止してしまうと、後ろから衝突されるリスクがあるし、逆に合流する相手の道路状況を見間違えて行けると思うと、側面からぶつかるリスクがある。これを動きながら判断しなければならないので、運転の下手な自分としてはYieldサインを見るたびに、またか、と思うのである。
  • No turn on redという標識がある。これを理解するには、まずTurn on redという概念を理解しなければならない。NJでは(もしかすると全米でも?)、赤信号であったとしても、右折は可能なのである(!)前述の通り、米国での右折は日本の左折であり、対向車に邪魔されることなく曲がることができる。このため、交差点で自分から見て左から来る車がおらず、かつ歩行者が横断していないのであれば、例え赤信号であっても右折してよい、ということになっている。Turn on redのTurnとはTurn rightという意味なのだ。これは、運転教習の教官曰く、オイルショック後にガソリン節約のためにできた法律である、とのことだった。つまり、右折しても実質的に危険がない状態であれば、アイドリング(これがガソリンを無駄に喰ってしまう)をさせないで、曲がってしまってよい、というようにルールを変えてしまったのだ。日本では、アイドリングストップ車というように、「技術」でこのガソリンの無駄遣いを防いだわけだが、米国では、「法律」で防ごうとしたわけである。なんというか、こういうのをカルチャーショックというのかな?と思う。Turn on redはあくまで自己責任であり、歩行者を見落としてしまったら事故につながってしまうわけで、日本では、こんな改正法案は、改悪法案としてみなされてしまうだろう。ここらへんが、根本的に日本と異なる。背後には、「個の価値観の優先度」「安全への意識の違い」「合理性」などがあるように思う。さて、話を標識に戻すと、Turn on redという標識は存在しない。この概念は「標識に表示されていなくても、当たり前のこと」なのだ。このため、この常識が禁止されている箇所にだけ、No turn on redという標識を掲げている、ということになる。この標識がある交差点では、たとえ赤信号であっても、右折をしてはならない・・・!というのは、日本人からすると「いつも通りにしていればよい」ということだ。むしろ、この標識がない場所で、赤信号で自分が先頭で右折のウィンカーを出しているときに、歩行者もおらず、左から来る車もいない場合であっても、日本の感覚からすると、右折はしないのだが、そうすると、後続車から非難囂々なのだろうな、と思ったりする。