2012年7月1日日曜日

122. スマートフォンがカメラを進化させる(ドミノゲーム)

カメラの話をし始めると、もう小一時間では済まなくなるのが常なので、今日は短く切り上げるつもりだ。


さて、最近、と言ってもここ半年くらいのスパンだが、キヤノンがミラーレス一眼を出すという噂がよく出てくる。
一時期は、エントリーデジタル一眼レフのEOS Kiss Xシリーズの最新機X6iと同日に発表されると言われていたが、それは実現しなかった。


(6月に無事EOS Kiss X6iは発売となった。同時に発表された、40mmF2.8のパンケーキは数年前から自分が欲していたスペックの物であり、ようやくキヤノンもパンケーキの重要性が分かってきたか、と思ったが、時既に遅し。既にコシナ製の40mmULTRON(パンケーキ)を買ってしまっている。標準域では、EF50mmF1.8とF1.4があり、パンケーキと言えど今更F2.8に手を出すわけにはいかないだろう。しかし、「光学性能優先」で「サイズ非重視」のキヤノンが変わったものである。パンケーキはPENTAXのお家芸だと思っていたが、キヤノンは作る気になりさえすればあっという間に作ってしまう。F2.8に抑えたのはパンケーキのコンセプトをSTMと両立させるためだろう。ULTRONはF2だが、AFは非対応だ。それにしても最近キヤノンの新製品発表にはがっかりさせられっぱなしだったので、この40mmとX6iの像面位相差AF搭載には久方ぶりの爽快感を感じた。)


このキヤノンのミラーレス機が注目される理由は、「業界最大手」のキヤノンが「現在市場が急拡大中のミラーレス市場」に「未だに」参入していない、という特異な状況が2年以上続くためである。


ミラーレス機は、一眼レフからミラーボックスをとっぱらったレンズ交換式カメラだが、その大きさが既存の一眼レフ機と比較して小さいことから、主に「コンパクトデジカメよりいい写真を取りたいけど、ごっついカメラはちょっと・・・」というエントリー層向けに市場を形成し、その後、富士フィルムのX-Pro1やOLYMPUSのOM-Dに代表されるような高級路線ミラーレス機も出始め、徐々にハイアマチュア層にも訴求しつつある。


百花繚乱。
撮像素子のサイズも、コンデジと変わらないレベル(PENTAX Qシリーズ)から、ニコン1シリーズの1インチや、OLYMPUS、パナソニックのm4/3、SONYや富士フィルムのAPS-Cサイズとバリエーションは広い。
ミラーレス市場はここ2年は急成長を続けており、明らかに既存のエントリー層向けの一眼レフが喰われている。


さらにここに来て、いわゆるコンデジの中にも、ミラーレス機と遜色ない撮像素子を搭載したモデルが出てきた。
キヤノンが「ミラーレスも喰うようなコンデジを出しますよ!」と年初に息巻いて、投入してきたPower shot G1Xは1.5インチセンサー(18.7×14.0mm)を搭載し、撮像素子としてはOLYMPUSやパナソニックのm4/3(17.3×13.0mm)よりも大きい。


一般に、撮像素子の大きさは、高感度耐性にも、ボケ味にも効いていて、大きければ基本的には綺麗であり、かつ製造が難しくなるので高価である。
つまり、ミラーレス機よりも大きな撮像素子を有するコンデジは、コンデジだけれど、ミラーレスキラーになりうる。しかし、G1Xは、「コンデジ?」というくらいの大物感漂う絶妙にでかい躯体と、その「女人禁制」的なマッチョなデザイン、そして、最短撮影距離の問題と、コントラストAFのみの搭載で、あまり大きなヒットとはならなかった。
せめて像面位相差AFの搭載はしてほしかった。
あと、デザインにももう少し配慮すべきだと思う。


(ちなみに、キヤノンのミラーレスには様々な噂が飛び交っているが、一番多い物は、G1Xの1.5インチセンサーを流用して作る、というものだ。これは、既存のAPS-Cの一眼レフ達に配慮(遠慮)しつつ、厳格に「ミラーレス」と「デジタル一眼」をラインで区別するやり方であり、大御所のやることとしては、正しい。同じく大御所のニコンも、まったく同じ戦法で、ニコン1という1インチセンサーを搭載したミラーレスシリーズを展開している。しかし、一カメラファンからすると、まったくもってつまらない戦法でもある。ミラーレスを単に「エントリー機の代替品」くらいにしか思っていないのであれば、最も知性溢れる選択なのだろうが、他社が既に保有しているシェアを奪い返す、という目的があるのであれば、もっともっと強力なコンセプトが必要だ。動画を重視する戦略(Cinema EOSシリーズなど)を展開しているキヤノンとしては、ミラーアップ状態が持続しているようなミラーレス機は、その動画性能を発揮する非常にいい「舞台」なわけで、それを既存品に気を遣ってちまちました戦略を取った結果、大成しないのであればもう本当に失望としか言いようがない。とはいえ、玄人の方々からすると、「APS-Cサイズにすると、レンズが大きくなってしまいどうしても不格好になってしまう。全体の大きさも、SONYのNEXシリーズが限界であり、ミラーレスで小型化するという目的が達成できない。」という意見もある。これも理解できるし、そのような読みはニコンがニコン1を始めたときにもあったのだろう。なので、1.5インチセンサーでミラーレスが出るのだとしても、それはそれで容認はするのだが、ただ、せめて、像面位相差AFは搭載してほしい。また、あのG1Xのデザインをそのまま踏襲することだけはやめてほしい。本当に。そして、動画性能を売り文句として、スッキリしたシンプルなモデルで、EVFありモデルとなしモデルを同時発売したら、それなりの話題にはなるはずだ。その上、別のラインとして、「フルサイズのミラーレス」が出たら相当素晴らしいが、そうなるとフランジバックの異なるマウントがEF&EF-Sマウント、1.5インチミラーレス用マウント、フルサイズミラーレス用マウントと3種類も混在する状況になるので、コスト意識の高いキヤノンはそんなことしないんだろうな。


その後、先日SONYから発売されたサイバーショットDSC-RX100も、1インチ(13.2×8.8mm)の大型素子を搭載したモデルで、35mm換算で28mm-100mm相当の広角端F1.8の明るめズーム(バリオゾナーを銘を冠す)を搭載し、そして何よりも、圧倒的な小ささで登場した。広角側が24mmスタートだったら!という声はよく聞こえてくるが、それでも、これは驚異的な小ささだ。
G1Xでキヤノンが成し遂げたかったコンセプトを、うまい具合に体現している。正直、カメラ作りの観点から、RX100はG1Xに勝っていると思う。発売から2日後にたまたまヨドバシカメラで触る機会に恵まれたのだが、落ち着いたデザインで、若干Zeissのマークが剥がれやすい難点はあるものの、よくできていると思った。(惜しむらくはリングファンクションがあるのにも関わらず、Power shot S100のようなステップズームがない点と、焦点域を変えた後、電源をOFFにすると必ず広角端にまで焦点がリセットされてしまう点だ。これはRX100の短所であり、S100の長所である。かく言う自分はS100ユーザー。負け犬の遠吠えのようで恥ずかしい。)


さて、これらコンデジの高性能化や、ミラーレスの台頭を受けて、既存のデジタル一眼レフは、改革を迫られている。
撮像素子では、ミラーレスとの差別化は難しい。
特にAPS-Cサイズではミラーレスでも一般的だ。
そこで、各社が今、APS-Cサイズの一眼レフ機を、他の性能(連射速度、AF、高感度)で上回るように変えつつある。
先のキヤノンのエントリー層向けデジタル一眼EOS KissX6iは、一つ上の機種「EOS 60D」の後継機かと思うような、高性能で登場してきた。
となると、60Dの後継機があるのなら、さらに上の7Dと被るような高性能に、7Dはひょっとすると、APS-Cからフルサイズへ撮像素子を大きくして5Dと同じ土俵へ、と連鎖的に性能の突き上げが起こることが予想される。


そして起こるのは、「フルサイズデジタルの一般化」だろう。(フルサイズとは、フィルム時代とほぼ同等の36×24mmサイズの撮像面を指す。なお、APS-Cは23.4×16.7mm)
まことしやかに、ニコンの廉価版フルサイズ機やキヤノンの廉価版フルサイズ機の登場が噂されているが、このような突き上げの流れでは、もはや出し惜しみできない状況になっているのだろう。まだ、フルサイズ機は「プロ用」もしくは「ハイアマチュア用」と認知されているが、そのうち、「ミドルクラス」の層も当たり前のようにフルサイズを使うようになるのだろう。


さて、こういった変化は、カメラユーザーにとってみると、非常によいことで、どんどん競争してもらいたいと思っている。しかし、このような流れを作っているのは何か?を考えてみると、それは意外と身の回りにある、「ありふれたもの」だったりする。


それは、スマートフォン。


ここ数年、スマートフォンは急激に一般化し、もはや普通の携帯の方が機種数が少ない状況である。スマートフォンはさまざまな恩恵をもたらしているが、搭載されているカメラが500万画素を越えたあたりから(つまり写真として十分成立するレベルに達してから)、「コンパクトデジカメ」の市場を喰い始めた。


日常的に持ち歩けるスマートフォンが、コンデジの代わりとなる。
コンデジは売れなくなる。
その結果、コンデジの高機能化、もしくは、コンデジからさらに上の階層(ミラーレス)への誘導が必然となってくる。


この「下」からの、いや、「外部」からの突き上げが、結果として、カメラ業界の起爆剤となり、今の進化競争が発生している。
と、勝手に憶測している。


はー、結局長くなってしまった。
これから、ニコンのD800のポジショニングの正しさとキヤノンの次の一手について考察を述べたいところだが、また今度にしよう。


さて、そんなデジカメファンの自分は、一方で、古いカメラも愛している。
最近、ヤフオクにも手を出し始め、重症化が止まらないかんじだ。




【1500円で手に入れたブロニカS2のプリズムファインダー(ジャンク品)】


ジャンク品ではあるが、実用可能。
どうやったらこうなった?という塗装の剝げ方が、USED感を演出しており、個人的には「ダメージ加工したジーンズ」と同じと思っている。どと言うより、リアルに古いジーンズの方に近いが。(ブロニカS2は1966年発売の一品。このプリズムもそれなりの年齢のはずだ)
問題は、総重量が2.2kgもあるということだ。
これは、グリップが必要である。うん、絶対に必要であるな。
ブロニカS2にはL字型グリップと、ピストル型(T字型)グリップがあり・・・