エジプトがすごいことになっている。
わずか半年前に僕はそこにいた。
暴動が起こっているその背景には、あのとき見たエジプト考古博物館が見える。
「ああ、あそこか。」
ニュースの向こうに「実感」が湧く。
あの宿から歩いて、、そうだな、20分くらいのとこ。
今でも僕は地図無しで、そこに辿り着けるだろう。
政情が不安定にならなくたって、エジプト人は日々、喧嘩をしている。
それは事実だ。
町中を一日ほっつき歩けば、2〜3回は盛大な口喧嘩に出会えるはずだ。
5〜6人が互いをののしり合ったり、なだめ合ったり。
しかし、今回の暴動は明らかにそれとは違う。
死者まで出しちゃだめだろう。
馬から引きずり落としちゃだめだろう。
そのあと、7〜8人が囲んで、殴ったり、蹴ったりしていた。
ひとり、ふたりではなく、7〜8人。
タイマン、ではなく、7〜8人。
いわゆる「砂にする」ってやつだ。
7〜8人が殴る、蹴る。
鼻血が出ていた。
そのあとも殴る、蹴る。
顔が不自然に横に揺れていた。
そのあとも殴る、蹴る。
もう無抵抗だ。
そのあとも殴る、蹴る。
そりゃ死ぬって。
そんだけ殴ったら死ぬって。
もうやってる方は、完全に憂さ晴らし。
「どうなろうと、どうでもいい。」
そんなかんじで殴る、蹴る。
どうでもいい外野の連中が、やってきては、殴る蹴る。
そんなこんなで、何人か死んだ。
日本ではちょっと考えられないけど、まぁでもそんなところだろう。
あの国は。
かつて居た場所で、暴動が起こった。
死者が出た。
でも、そのことにちっとも違和感を感じない。
僕が見たエジプトは確かにそんなかんじだった。
「ああ、エジプトかぁ。たしかにありそう。」
そう思えた。
残念だけど。
事実だ。