なんとなくなのだが。
最近の北朝鮮と韓国の状況(2010年3月、黄海上の南北朝鮮の境界に近い場所で韓国海軍の哨戒船「天安」が沈没し、その原因が北朝鮮による魚雷であったと5月20日に韓国側が発表した)は、これまでの両国の状況とはちょっと違っている気がする。
まず、明確に死者が出ていること。
実に、46名である。
僕はあまり韓国と北朝鮮のことに詳しくないので間違っているかもしれないが、確か、2009年11月の南北艦艇銃撃戦でも北朝鮮側に数人の死者が出ていた。
しかし、11月の銃撃戦と今回の一件が大きく異なるのは、
「銃撃戦を繰り広げた結果(つまり、両国が互いに戦闘状態に突入したのを認知した後で)、死者が出た」のではなく、
「一方的に北朝鮮から攻撃を受けた結果、死者が出た」
という点である。
つまり、今回の一件は、「加害者と被害者」が明確である。
(もちろん、今回発表された調査結果が間違いだったという可能性もあるが、報道を見る限りは「かなり科学的に」調査されているようで、米国を始め各国がその信頼性を認めている。このため、修辞学的な都合上、ここでは「仮に」調査団の結果を支持して、文章を書くこととする。)
「加害者と被害者」が明確な場合、加害者が被害者に謝ってその罪を償えば事は済むわけだが、「加害者が加害したことを認めない」場合、話がこじれてくるのは人間関係と全く同じである。
そして、例によって北朝鮮は「やってない」「韓国の自作自演だ」と言ってきた。
殺害された韓国人の家族としてみれば、「すっとぼけんな馬鹿野郎!」であろう。
その上、例によって「制裁するなら戦争で応じる」「現事態を戦争局面とみなす」等と強気路線の発言をしている。
これを個人の関係で喩えるなら・・・
自分の息子が誰かに殺された。
息子の胸に刺さっていたナイフから犯人の指紋が見つかり、
隣家に住む男の指紋と一致した。
証拠は十分。
しかし、その男はシャアシャアとこう言う。
「俺はやってねぇよ。知るかよそんなこと。あ?なんだその目は?殺すぞ!」
被害者の父親としては全く持って許しがたい状況である。
韓国人の家族意識は強い。
それは、日本人と比べ物にならない程だ。
それ故に、今回の46名の死は、韓国という「大きな家族」に、息子を殺されたような感覚を引き起こしているだろうと推測する(※あくまで個人的見解です)。
さて、現実の韓国を振り返ってみると、金大中大統領以降、盧武鉉大統領までは北朝鮮に融和を図る「太陽政策」を継続してきたが、度重なる物資の支援を行っているにも関わらず、北朝鮮側の挑発/要求/ミサイル発射(2006年7月)/核実験(2006年10月、2009年5月25日)は繰り返され、世論は「いい加減にしろ!北朝鮮!」という方向に変わってきた。
そこで、現政権の李 明博大統領は、「南北融和ありき」の太陽政策から一歩引いた姿勢をとっている。
恐らく、もう「駄々っ子行為」に付き合ってくれる程、甘くはないのだと思う。
さらに、国連の事務総長が韓国の潘基文(パンギムン)氏であることも、目を引く。
曰く、「調査結果は、否定し得ないもの」であり、「北朝鮮の容認しがたい行為は、地域の平和と安定を促す国際努力に反する」ものであり、「韓国国民の焦燥感と怒りが十分に理解できる。国連事務総長としても、一人の韓国国民としても、非常に心が痛む。私の気持ちがわかるでしょう」と訴え、「私の祖国だ」と結ぶ。国連の事務総長が自国に対してこれほど感情的な発言をするのは異例である。
もちろん、事務総長の「感情」がダイレクトに国連の選択に反映されるわけではないが、しかし全く影響を与えないわけでもあるまい。
今後も本件については注意が必要であろう。
・・・といったところで筆を置こうと思ったのだが、ほとばしる妄想を蛇足だが書いておこうと思う。以下の文章は歴史的考証や正しい情報に基づくものではなく、一個人のサラリーマンが勝手な憶測と偏見で書いている最低で最悪の独断的文章であるということを承知の上で、興味ある方のみお読みいただきたい。
・そろそろアメリカは戦争したいんじゃないだろうか?
イラク戦争で米国民は一様に傷を負った。
イラクでの終わらぬ戦闘、増え続ける米軍の死者、
「もう派兵はやめてくれ!」
「戦争反対!」
「ブッシュは悪魔だ!」
そういった世論を受けて、オバマ大統領はイラクからの完全撤退を謳い大統領に就任。その後、この公約を撤回したものの、2010年8月末までにイラク駐留戦闘部隊を撤退させるという代替案を提案している。
しばらく前から、米国民の感情に敏感なハリウッド映画では、
「大国の発想は間違っていた。」
という反省ものの映画が続いていた。
そこでは、大国アメリカや力の象徴である米軍が惨めに破壊されるシーンが数多く描かれることになる。
しかし、最近はそのような風向きが若干変わってきている。
「イラク戦争は悪かった!」
↓
「イラク戦争を引き起こした前政権は悪かった!」
↓
「前政権に操られて悪いことをしたけど、米軍ひとりひとりは心の通った同じ市民であり、命がけで戦う正義の集団なんだ!」
↓
「悪かったのは前政権で、政権交代して区切りはついたので、今の米軍はきれいな米軍ですよ。みんなのヒーロー!頼れる米軍!」
こんな感じの主張を潜ませた「ハート・ロッカー」や「グリーン・ゾーン」が流行っているということは、米国民の自信(自軍)回復も大分進んできたのだろう。
さて、もうしばらくすると米軍のエンジンはいよいよ暖まってくることだろう。
経済の起爆剤として、戦争は必要だ。
いつだってそうしてきたじゃないか。
不景気を戦争で吹き飛ばそう!
戦争の裏に潜む、甘い甘い「特需」。
だってそうだろう?
1929年から始まった世界恐慌だって、結局第二次世界大戦による莫大な軍需景気で乗り越えてきたじゃないか。ルーズベルトのニューディール政策があったって?そんな政策より大戦特需の方がはるかに効果があったさ!1965年からのベトナム戦争だって特需を生んだじゃないか!
リーマンショック、ギリシャ発の信用収縮、それに伴う株価の低迷、莫大な時価総額の損失、貿易赤字に財政赤字。そんな暗いことは戦争で一気に吹っ飛ばしちゃえばいいじゃん。
ってなことを、アメリカンジョークを交えながら、ホワイトハウスで話されているじゃないかと妄想している。
「北朝鮮と韓国が戦争になったら、米軍に要請がくるわけだ。」
「そうだよね。それで特需♪特需♪」
「そうすると、東アジア一帯の平和の維持には、米軍と言う抑止力が必要であることが明白になるわけだ。」
「おっおー♪だったら、ついでに普天間問題も解決できるんじゃね?」
「い ー ね ー !」
「ちょっとあおっちゃおうぜ。まずはテロ支援国家に再指定しちゃおっか?」
「い ー ね ー !」
「ついでに金融制裁も最大レベルまで上げてやろう!」
「い ー ね ー !」
ってな具合で、北朝鮮への締め付け強化と国連安保理を介した国際的な包囲網の構築で、「北朝鮮の暴発」を誘導する方向に力をかけていくという選択肢も「国益のみ」を考えればありうると思う。
さて、仮に戦争になっちゃった場合を考えてみよう。
参考になるのは、1950年から始まった朝鮮戦争であろう。
1950年6月25日午前4時、突如北緯38度線にて北朝鮮軍の砲撃が開始。
このとき、宣戦布告は行われなかった。つまりは、奇襲である。
恐らく、もし今回戦争状態に突入するとしたら、北朝鮮側からの宣戦布告はないだろう。むしろ、「調査団の挑発的調査結果が宣戦布告であった」とか言って、先制攻撃を肯定するに違いない。
さて、北緯38度線からソウルまでは車でわずか1時間半〜2時間程の距離(去年行ったかんじだと)。長距離弾道ミサイルでなくても、北朝鮮領土内からソウル中心部は十分に破壊できる。
もし、僕が北朝鮮の王様だったら、ソウル陥落を第一優先とするだろう。理由は簡単だ。
「1000万人のソウル市民を人質にする」ためだ。
この人質を使って、まず休戦を要求。
ここから米国、国連と交渉を開始する。
平壌の陥落が先か、ソウルの陥落が先か。
ギリギリのスピード勝負となるだろうが、奇襲が成功するとすれば、ソウル陥落の方が早いような気がする(全くの勘だが)。
さて、こんな状況に置かれた場合、米国含め国連軍は非常に厳しい判断を迫られるものと思う。まず、鳩山首相では判断できないだろう。しかし、米軍が本気で動くとしたら、北朝鮮の要求を飲まずして、一気に平壌を攻め落とし、北朝鮮軍の本部を壊滅させることを優先させると思う。
これは、過去の朝鮮戦争を振り返ると当然の流れだ。
北朝鮮の奇襲攻撃が功を奏し、1950年6月から9月の間に朝鮮半島の8割が北朝鮮によって制圧されることになる。しかしその後、マッカーサー率いる米軍、イギリス軍、韓国軍を中心とした国連軍が反攻を開始。9月28日にソウル奪還、10月20日には平壌まで制圧した。このような流れからすれば、戦争状態になった場合、不当な占拠に基づく要求は国連にも米軍にも通用しなくなるのは明白だろう。
さて、この後の展開も見てみよう。
国連軍が平壌まで制圧したことから、南北朝鮮の統一が図られるかに見えたが、ここで北朝鮮側に中国軍が参戦することになる。中国軍は、ソ連から支給された最新鋭の武器を使用し、10月24日頃から北朝鮮領内に侵入。その後、12月5日には平壌を奪回。翌1951年1月4日にはソウルを再度奪回するまでに至った。
つまり、中国の援軍と、ソ連の後ろ盾が入った結果、北朝鮮は盛り返したわけだ。
その後、国連軍が再度態勢を立て直し3月14日にソウルを再び奪回。この後、戦況は38度線を境にこう着状態となり、休戦協定を経て、現在に至る。
さて、今後戦争が起きたとして、果たして中国やロシアは北朝鮮に協力するのだろうか?
少なくとも中国は、北朝鮮に派兵することはしないと思う。というのも、本日開かれた「米中戦略・経済対話」で、クリントン米国務長官と胡錦濤国家主席が「韓国哨戒艦沈没事件の対応を巡っては、米中で緊密な協議を継続することで一致する」との見解を示しているからだ。
中国は、当面「冷静な対応を求める」といった制裁強化への慎重な姿勢を示し、暴発の回避を図るものと思う。しかし、ひとたび上記のような戦争状態に突入してしまった場合、「無視」を決め込むくらいしかしないのではないかと思う。
50年前のようなソ連対米国という冷戦構造は無くなっているし、経済で中国と米国の相互依存関係は分ちがたい程強く絡まりあっている。
つまり、政治的な理念では同化できなくても、戦争のような対立はお互いに避けたい(少なくとも現時点では)。
ロシアについては、まだラブロフ外相の「(本件については)全ての当事者に自制と慎重さが求められる」程度のコメントしか発表されていないため、どのように出てくるのか分からないが、中国と同様の動きになるのではないだろうか。
さて、日本はどうだろうか?
5月20日に首相官邸で行われた記者団とのやりとりを抜粋してみよう。
記者団)
−−韓国の哨戒艦沈没事件に関し、北朝鮮の攻撃が原因だと断定したことを受けて、韓国は国連安全保障理事会で制裁決議案を提起する方針だ。その場合は日本も協調する考えか。また、6カ国協議の見通しについてはどのように考えるか
鳩山首相)
「はい。きょうご案内の通り、韓国の政府が調査の結果を報告をしました。その結果に
よれば、北朝鮮の魚雷による沈没であるということでありました。大変これは遺憾なことで強く北朝鮮に対して非難をいたします。当然のことだと思います。そして韓国の政府に
対して、あるいは韓国の国民に対して、哀悼の意を改めて申し上げるとともに、私どもと
すれば、これは韓国の立場を支持をする。すなわち、もし韓国が安保理に決議を求めると
いうことであれば、ある意味で日本として、先頭を切って走るべきだと、そのように考えておりまして、強くその方向で努力をしたいと思います」
・・・ごく私的な感想を言わしてもらえば、「集団的自衛権すら憲法で認めていない国の首相がそこまで言うことはできないだろう」である。
対北朝鮮の先頭に立つ?
先頭に立って何をするのだ?
先頭に立って戦闘しないなんてありえないだろう?
せいぜい日本にできることは、米軍への物資支援と長距離ミサイルが間違っても飛んでこないことを祈るのみだ。
1950年の朝鮮戦争当時と決定的に違うことは、「北朝鮮のミサイルが物理的には日本にも届く」ということだ。
1950年の朝鮮戦争では、日本に特需が生まれた。
米軍が物資調達のために大量のドルを日本に落とし、これが戦後経済の立て直しとその後の高度経済成長期の足がかりとなったのは言うまでもない。
しかし、仮に「次」の朝鮮戦争があったとして、それは日本にとって「対岸の火事」なのだろうか?「特需」を生む起爆剤なのだろうか?そんな簡単な話なのだろうか?
例えば、僕が北朝鮮の王様だったら、こんな交渉の仕方をするだろう。
「我が国には強力な長距離弾道ミサイルがある。今、そのミサイルを東京を目標としてセットしたところだ。さて、何から交渉しようか?」
日本を超えて太平洋に落ちたテポドンの能力を考えると、とりあえず日本にミサイルを届けるくらいの力はありそうである。東京を狙って、栃木に当たったということくらいはありそうだが、とにもかくにも「日本の都市が人質にされる」という可能性も0ではない。
そうなった場合、日本の自衛隊は何ができるのか?
先制攻撃はあり得ないので、とりあえず東京に着弾するまで自衛隊は動けない(ことになっていたはずだ)。
とすると、米軍か?
確かに米軍であれば、「大量破壊兵器の疑いがある」という疑いレベルの理由でイラク戦争を起こすくらいなので、そのような「侵略行為に直結する恫喝は、侵略行為と見なし先制攻撃を仕掛けてもかまわない」という論理を組み立て、攻撃に向かうかもしれない。
そうであるなら、ありがたい。
しかし、間違っても攻撃の最中にテポドンが発射された・・・なんてことはないよう、確実に短時間で制圧してくれることを切に望む。
だが、アメリカの国益だけを考えた場合、むしろ四角四面に日本にミサイルが着弾してしまってから「侵略行為」と見なし、攻撃を加えた方が得かもしれない。
「すまんけど、攻撃する理由作りのために、東京は犠牲になってね☆」
的な判断をされてしまうと非常に困る。
とはいえ、日本の大都市が壊滅的打撃を受けて、日本円や日本株が暴落した場合、それがキッカケとなって恐慌が起きる可能性もあるので、そんな短絡的な判断はしないと思われるが。
何はともあれ、そういうことも含めて、政府には日本の姿勢を決めてもらいたい。
さて、そうこうしているうちに、「北朝鮮、韓国との関係断絶」というニュースが入ってきた。いよいよ緊張が高まりつつある・・・。
listening to nothing