2012年3月18日日曜日

111. 通説がうそになるとき(5DMkIIIとD800)

一般に、デジカメの撮像素子は「高画素数になると、高感度時のノイズが高くなる」と言われている。

この通説に則って、Canonという会社は数年前から「高画素数を競うのはやめて、高感度性能を高める方向に梶を切りましょう。」と言って、画素数は控えめ(2200万とか1880万とか)で、常用感度をISO25600くらいまで引き上げるという方針で新機種を設計してきた。
先頃発表されたEOS 5D MarkIIIという機種はその思想を体現したハイアマチュア向けのフルサイズ機だ。
MarkIIから3年以上経過し、待ちに待った新機種、と言える。

一方、ライバルのNikonは、高画素路線をそのまま突き進み、3600万画素という高画素機D800を出してきている。5D MkIIIと同じくフルサイズ機で、ハイアマチュアがターゲット。価格帯も35万円前後なので、思いっきりライバル機種である。


さて、冒頭の通説によると、「1400万画素も高画素であるD800は、高感度性能では5D MkIIIには負ける(一方、解像力では画素数分勝る)」ということになるが、なるはずだが、なるはずだったのだが、、

そうはならなかったようだ。


参考サイト
http://www.fotoactualidad.com/2012/03/hora-de-la-verdad-nikon-d800-vs-canon.html


ズコーっ!とずっこけているCanon ファンとCanonの開発陣が目に浮かぶ。

さて、高感度性能は同等、解像力が高く(細かなものがきちんとそのまま映る)、トリミング耐性も当然高く、それでいて同じ値段なら、あなたはどっちを買うだろうか?

レンズ資産がなければ、迷わずD800だろう。

実は、No.108.の記事では、


「ライバル機種となるD800(E)では3600万画素なので、トリミング耐性で考えた場合、同じ価格帯でこの画素差はいかがなものか、と見る向きもいるかもしれないが、高感度時のノイズ耐性も含めて比較した場合、どのような差異が見られるかを考慮すべきだろう。結論はまだ出せない。」

と書いていたのだが、真相は「高感度性能でもそれほどD800は見劣ることはなかった。結論は、D800の勝利である。」ということだ。

(僕は、高感度耐性として3段以上の差がなければ、トリミングのことも考えて、1400万画素多い方に軍配を上げる人間だ。縮小はいつだってできるし、HDDは増設すればいい。そういう考えの持ち主(若干バブリー)なので、「3600万なんて、畳一畳とかそんなサイズに引き伸すことのない人にとっては不要でしょう?2200万くらいで十分なんじゃない?身の丈にあったちょうどいいサイズってものがあるんじゃない?」論者にとっては、相容れない結論と思うが、もうここは根本的な認識の違いなのでご容赦願いたい。大体、そんなこと言う人が一番多くプリントしているのが2Lだったりするので、だったら500万画素のデジカメにしたら?とか思ってしまうわけである。500万画素でも2Lならいける。)


さて、Canonはどうするのだろうか?

デジタル一眼レフの牌が全体的にミラーレスに浸食されつつあり、
D60ではAPS中級クラスを確立できず、
待ちに待たれた5D MkIIIでは肝心の高感度性能で(すら)遅れを取り、
ミラーレスを喰う!と宣言したPower shot G1Xでは最短撮影距離を酷評され使い物にならないとされてしまった。

おかしいくらいにうまく行っていない。
Cinema EOSに本当に開発資源を投入すべきか、もう少し考えなおした方がいいのではないだろうか?

Canonのレンズは間違いなくいい。
また、トータルで見た時に、価格に対してバランスのいい実直なカメラを出していると思う(もちろん、そう思わない人もいるにはいるが)。
映像エンジンGigic の吐き出す絵も、記憶色と言われれば記憶色かもしれないが(現実より鮮やかに映る)、ある意味、現実に魔法をかけるような色乗りの良さを持っている(それはポジフィルムでも同じだし、逆に、ネガカラーは「思い出色」をしている。現実を射影するフィルムなり、CMOSセンサーなりは、そこに一意的な関数を持って対応を取っている以上、魔法がかからないなんてことはない。要はその傾向と、度合い、そして個人の趣向との一致性である)。
AFの早さ、精度は伝統的に、最高だ。
Canonには、実力がある。そう思っているからこそ、きちんと開発戦略を練ってもらいたいと切望する。