2012年3月4日日曜日

109. 最近のこと(EOS 5D Mark IIIとブロニカS2)

年が明けてから仕事のテンポが上がり、2ヶ月程このブログにも記事を書けない状態が続いてしまった。
ようやく一段落(それがいいことか悪いことかは置いておいて)したので、久しぶりにこの画面に向かっている。

何から話そうか?

まず、比較的タイムリーな話題として、待望の新機種「EOS 5D Mark III」が3/2(金)に発表されたことからいこうか。
全般的に見て、EOS 5D MarkIIIは Mark IIから「正常進化」した機種と言えると思う。

画素数的には控えめな変更で、2110万画素 → 2230万画素。
これは、キヤノンが以前から言っている「2年程前から、高画素化から、高感度化へ梶を切った」という開発方針通りだ。

ライバル機種となるD800(E)では3600万画素なので、トリミング耐性で考えた場合、同じ価格帯でこの画素差はいかがなものか、と見る向きもいるかもしれないが、高感度時のノイズ耐性も含めて比較した場合、どのような差異が見られるかを考慮すべきだろう。
結論はまだ出せない。

キヤノンとしては、使い勝手のいい画素数(プロが撮って、雑誌に載せる際に求められる写真のサイズはせいぜいA3くらいなので、無駄に大きい画素数だと持て余してしまう)として2200万画素を選んだということだと理解している。

さて、5D MkIIは2008年11月下旬に発売されたが、MkIIIは2012年3月下旬発売予定。この3年と4ヶ月で進化した主な点としては、

・AFの測距点が9点から61点になったこと
・連続撮影枚数が3.9コマ/秒から6コマ/秒になったこと
・常用ISO感度が100〜6400が、100〜25600になったこと
・映像エンジンがDIGIC 4からDIGIC 5になったこと
・動画撮影機能の強化(16:9のHD動画撮影、録音機能の向上)
・HDR合成など画像処理機能の追加

といったところだろうか。
これを自分の使い方に当てはめてみると、

・AFの測距点が9点から61点になったこと
(もともと中央1点のAFしか使わないのであまり影響ない)
・連続撮影枚数が3.9コマ/秒から6コマ/秒になったこと
(そもそも連続撮影を使うことがない)
・常用ISO感度が100〜6400が、100〜25600になったこと
(これはありがたい。巷の噂では、MkIIより2段分の改善があるらしい。僕はMkIIではISO1600まで作品撮りに使用できると思っているので、MkIIIではISO6400まで使えそうということになる。これはありがたい。)
・映像エンジンがDIGIC 4からDIGIC 5になったこと
(これは恐らく、ISO感度のところに最も効いてくるのだろう。なので、ISOのところと同じ感想。ちなみに、同じくDIGIC5を使用したPower shot S100という機種を最近使っているのだが、こちらも撮像素子の小さなコンデジとしては高感度時でもノイズがかなり少なく、室内でも安心して使えるレベルだ。)
・動画撮影機能の強化(16:9のHD動画撮影、録音機能の向上)
(動画は容量を喰うのであまりやらない)
・HDR合成など画像処理機能の追加
(これは、RAW撮りしていれば、後日Photoshopで如何様にも再現できるので自分の環境としてはあんまり必要性を感じない)

というわけで、キヤノンには申し訳ないが、正常進化した部分ではISO感度の部分のみ、「自分の使い方では」目を引く進化である、ということになってしまう。
(世の常で、キヤノンは新製品を出す度に、まずは批評(酷評)され、のちに大ヒットする。地味ながら性能の良さはいずれ評価されるので、今回も同じような経路を辿ると思われる)

ただ、5D MkIIとMkIIIは併売されるとのことなので、約16万円のMkIIと約35万円のMkIIIでは価格差と機能差で考えた場合、MkIIIの分が悪いように感じてしまう。
「廉価なフルサイズ機が欲しい」という声には、MkIIを用意している、ということなのかもしれない。

廉価なフルサイズ機、というのはSONYが恐らく出すはずで、そういう意味ではMkIIを残しておいて、SONYの廉価版フルサイズ機対策を張っておくというのも一つの戦略だろう。

当初、EOS 5D の新機種はMarkIIIではなく、EOS 5D Xという新しい名前のものになるとの噂もあった。「X」というのは1D Xと同様に、二つのラインを統合する意味があり、7D と5Dがクロスするような機種が出る、との噂だった。
しかし、結果としてMark IIIで出てきたため、恐らく、7D系は残るということだろう。

5D Mark IIIは期待通りの性能を備えていた。
しかし、期待を大きく上回るものではなかった。
今のところ、Mark IIをやめてまで、かつ35万近く出してまで欲しいと思う機種ではないように思う。
実機を触ってから、考えよう。

とここまで威勢良く書いてきたのだが、昔の記事(2011年9月)で以下のような記述を行っていたことを思い出してしまった。

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それよりも、マイナー集団としては、そろそろEOS 5D Mark IIIを出してほしい。
DIGIC5の搭載(これは確実)、ISO感度の向上(常用感度で12800まで、実用感度で3200)、AF測距点の増加(せめて20点。30点行けば御の字)、連続撮影速度の向上(3.9→せめて8)、バリアングル液晶の搭載(これは、まぁーできたらで)、HDR撮影(微妙なところ)、プラスチックの質感の向上(これは多分されない)、軽量化(絶対無理だけど)と色々ある。
正常進化を望むばかりである。

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なるほど。
半年程前の僕の予想は、以下のように当たっていたりはずれていたりしたわけだ。

・DIGIC5の搭載(これは確実)→おっしゃるとおり。当たってました。
・ISO感度の向上(常用感度で12800まで、実用感度で3200)→これはキヤノンの勝利。常用感度で25600で、実用感度で恐らく6400であり、僕の予想の一段上を行っている。
・AF測距点の増加(せめて20点。30点行けば御の字)→これもキヤノン勝利。61点は想定の範囲外。
・連続撮影速度の向上(3.9→せめて8)→これは予想以下となる。とはいえ、僕にはあまり関係ないスペックだけど。
・バリアングル液晶の搭載(これは、まぁーできたらで)→やっぱり見送られました。プロ向けならそうか。
・HDR撮影(微妙なところ)→これは取り入れてきました。ここらへんが意外かも。まぁ取り入れやすいテクニックではあるけども。
・プラスチックの質感の向上(これは多分されない)→実機触ってないから何とも言えないけど、多分悪い。写真からそう思う。間違ってたらすまん>キヤノンの人
・軽量化(絶対無理だけど)→やっぱり無理だった。45g程重くなっている。まぁそりゃそうか。キヤノンは伝統的に、重さと大きさには寛容だ。本体もそうだけど、レンズをどうにかしてほしい。いい加減35mmF2を新しくしてほしい。

半年前に自分が思ったことと、現実の変化を照らし合わせてみると、なるほど未来とはやってくるものなのだな、と思ったり。
これだから、デジカメウォッチはやめられないと思ったり。

とか何とか言いつつも、ブロニカS2で、息を殺しながら(激しいシャッターショックによる手ぶれを押さえるため)、勘露出で撮ることの方が、「何でも確実に撮れるデジカメ」より、えも言われぬ満足感があるよなぁとも思っている自分がいる。
1人の人間には、かくも多様な価値観が混在しうるのか。我ながら一貫性の無さに驚いてしまう。

ブロニカS2は、1965年に発売された電池も不要な「カラクリ」カメラ(機械式カメラ)だが、未だに現役。その老体に似合わず、甲高いシャッター音を響かせている。ハッセルの模倣品として揶揄されがちだが、例えばフィルム送りのレバーと撮り終わった後の巻き上げレバーが同一で、ハッセルでやりがちな「巻き上げ忘れてフィルムを取り出してしまう」というミスは起きえない構造になっているといった利点もある。(先日、このミスをまたやってしまった。痛恨の極みである。ああ、恥ずかしい。)

明らかにスタイルではスマートなハッセルに三歩程遅れをとっているが、実はブロニカS(初代ブロニカ)はよりハッセルに酷似しており、スマートだった。しかし、あまりに酷似していたため、ハッセル側から訴えられ、デザインを改変することとなった。その結果、S2のような無骨なデザインに落ち着いたのは興味深い。元々のハッセルは「スマート」であるのに対して、模倣した結末が「無骨」なのである。レバー一つとっても、実に線が太く、「鎧」を思わせる存在感だ。ハッセルを真似て、ハッセルとは対極に位置してしまったブロニカ。
しかしその奇妙な経緯のおかげで、今の新製品とは一線を画する存在感を放っている。1965年から数えると、今年で47歳である。僕は1982年生まれなので17歳も先輩ということになる。

そんなブロニカに詰めるフィルムは、ISO 400 のT-MAX。ISO25600とか、そんなんなくても撮れるものは多い。スローな気分で撮りたい時、ブロニカS2はそれに応えてくれるような気がしている。(しかし、話は脱線するが、つくづくISO400というのは優れた感度だと思う。何が優れているかと言うと、シャッタースピードとのバランスである。日中の、屋外の撮影においては、大抵のカメラが用意するシャッタースピードで対応できる。このバランスの良さは、ISO100では実現されず、ISO400で初めて実現される。一方、ISO800だとF2.8のレンズでは開放だとシャッタースピード的に厳しくなってしまい、また値段も高く、バランスが悪くなる。ISO100ではより滑らかなトーンが得られるけれど、曇りで日陰や屋内だと途端に厳しくなる。やはり、バランスとしてはISO400が最も良い。僕はカラーではポジフィルムの方が「生々しさ」があって好きなのだが、ポジフィルムはISO100がほとんどで(一応プロビアにISO400のものはあるが)、前述の通りちょっと曇りの日にはもう対応が難しくなるという欠点がある。だからと言って、すぐにISO400のネガカラーに移れるかと言うとそうでもなく(ネガカラーは「思い出色」過ぎる)、結果として、ISO400の白黒フィルムT-MAXに落ち着いている、といった次第だ。KODAKは潰れてしまったし、今後どうなるかわからない不安も含めて「T-MAX最高」なのである。)

とか何とかノスタルジックに語ってみたが、それもこれも、実はPowershot S100という頼れるコンデジができたからという見方もある。
ブロニカS2で室内撮りというのは光量の問題からかなりきついし、例えば、食べ物を撮るという気軽な撮影には全く向いていない(甲高いシャッター音が店中に響き渡ってしまうし、中盤フィルムは枚数が撮れない分、結構高くつく)。そういった被写体は、S100でほとんどがカバーできる。こういうオールマイティーなコンデジがあると、安心して趣味カメラを持ち出せるというものだ。特にS100は胸ポケットに入るくらい小さいので、大きな中判カメラとも併用できる。「苦にならないサイズで、頼れるカメラ」というのは思ったよりもいいものだ。

フィルムカメラの良さを発見する上で、良いデジカメが必要だった、というのは何とも不思議な話である。両者が(かろうじて)オーバーラップしている今だからこそ、成り立つことなのかもしれない。ブロニカにせよ、S100にせよ大事に使っていこう。