2015年3月9日月曜日

194.進撃のキヤノン

ああ、やっとこのタイトルで書ける。
ようやくキヤノンが反撃の狼煙を上げ、ここ最近気合いの入った製品を連発している。
既にやや古い情報になってしまったが(落ち着いて書く時間がここ数週間作れなかった)、少し振り返ってみたい。

キヤノンは、昨年の9月にAPS-Cフラッグシップ機 7D MarkIIを発売してから、本気度が上がってきているように見える。

出典: http://kakaku.com/item/K0000693649/images/ 


ここ数年待ち望まれてきたAPS-Cサイズ 高速連射機7Dの刷新は、期待が大きいだけに失敗したときのリスクも大きいものだったが、見事に期待を上回る出来だった。10コマ/秒とEOS-1DX並みのAF性能で、鳥や航空写真、スポーツ系の動きものを撮る人々から大歓迎された。

また、同じクラスのニコン機(D300S)が長らく刷新されていないことから、ニコンのDXフォーマット(APS-C)ファンも一部キヤノンに鞍替えしようか、とつぶやく結果となった。(実際にどうなったかはわからないが)

さて、遡ること3年前、2012年2月、ニコンは3630万画素のD800を発表した。この画素数は前機種のD700(その後別ラインとしてD750に分かれるが)が1210万画素だったことを考えると、実に3倍で、如何にインパクトのある高画素化であったか分かると思う。

それより以前は、フルサイズの高画素機と言えばキヤノンの5D MarkIIで、2230万画素だった。ニコンはしばらくキヤノンの高画素フルサイズに嫉妬し、それを大幅に上回る機種を出したのだった。

しかし、高画素と高感度耐性は逆相関すると当時考えられており、発表から発売までは、「そんな高画素はいらない、高感度耐性を高めたバランス機がよい」との論調が多かった(噂サイトで)。

蓋を開けてみると、意外にも高感度耐性もよく(結局プリントするサイズは小さいので、縮小することによってノイズが見た目上キャンセルされ、意外とISO6400でも鑑賞に耐えることが発覚した)、大ヒットとなった。

対してキヤノンは、D800にやや遅れて、2012年3月に5D Mark IIIを発売したが、これは完全にバランス指向型の機種で、画素数は据え置き2230万画素。

5D Mark IIIは、高いAF追従性能と常用ISO25600までの高感度対応で訴求したが、D800よりも約5万円近く高い値段設定で、割高感があった。

肝心の高感度対決でも、ISO6400では同サイズにリサイズしたD800にディテールの保持で敗れ、キヤノンファンは落胆を隠せなかった。(D800はISO6400までしか設定できないため、ここでの対決となった)

さらに追い打ちをかけるのは、DxO mark scoreで、ニコンが採用するソニー製センサーはフルサイズでは90ポイント以上を叩き出す一方で、キヤノン製センサーは83ポイント程度。センサー性能も大きく水をあけられていることは明らかだった。(この点をあげつらうサイトがいくつかあって、キヤノンファンとしては見ていて悲しくなってくる)

さて、こうなると、キヤノンファンが今度は嫉妬する番である。
「キヤノンの高画素機はどうなるのか?このまま水をあけられたままでいいのか?」
ここから長らく、キヤノンの「冬の時代」が始まる。

(なお、5D Mark IIIの名誉のために補足すると、その設計意図通り、バランス指向型の機種として完成度は高く、今となっては扱いやすい名機とされている。キヤノンが真面目な技術開発を行っていることは間違いない。)

さて、話は2015年現在に戻る。
ニコンのD800から遅れること3年、キヤノンも遂に高画素機を発表した。
EOS-5DSと5DSRである。

出典:http://kakaku.com/item/K0000741187/



出典:http://kakaku.com/item/K0000741188/


有効画素数は5060万画素。
ローパスフィルターの効果あり、なしでEOS-5DSと5DSRに分かれる。
これは、ニコンのD800とD800Eの2ラインと全く同じやり方で、またネーミングは、ソニーのRX1とRX1Rと全く同様である。(ローパスフィルターレス(もしくは弱めた方)をRとし、赤字にすることまで一緒)

他社がうまくやってのけた戦略を、そのまま借用するのはキヤノンのお家芸(横綱の後追い相撲)だが、今回もまさにそのような方法で、結果としては「意趣返し」をしたことになる。
(ここまで来ると、嫌みなのか?とも勘ぐりたくなる。)

(余談だが、なぜ5DSはロゴを金色にしてしまったのだろう?以前キヤノンは色を無駄使いせずブランドイメージの演出がうまいという趣旨の記事を書いたが、一部前言撤回しなければならないように思う。この金ロゴは、訳が分からない。これを承認してしまうセンスの持ち主がいるということなのだろう。個人的にはとても残念だ。ただ、5DSRの方は銀と赤で、Lレンズとの相性もいいデザインだ。もしかして、5DSRを買わせようとでもしているのか?などと穿った見方をしてしまう。)

さて、時を同じくして、今年2月20日。
オリンパスのOM-D EM-5 Mark IIに、センサーシフト方式の手ぶれ補正機構を応用し、半画素ずつずらして8枚撮影した画像を合成することで、4000万画素の画像を得るというとんでもない技術が搭載された。
この撮影は、残念ながら静物に限られることになるが、それでも、4000万画素の画像を得る手段がマイクロフォーサーズに搭載されてきたという点は注目に値する。


世はついに、4000万から5000万級の高画素時代に移りつつある。


さて、進撃のキヤノン。
ネックは例によって値段である。5DSが45万、5DSRが48万円。中古車ならば買えてしまうような値段だが、これがどこまで受け入れられるだろうか。

また、5000万画素についてこれるレンズの選択と、巨大ファイルサイズのハンドリング、等倍鑑賞で目立つ手ぶれ(微ぶれ)等、性能が上がったことによるトレードオフもある。
この辺り、キヤノンは十分分かっていて、恐らく生産調整をきちんとしてくるはずだ。

その上で、バランス機を5D MarkIVとするのだろう。
賢い。

技術で勝ることを誇示しつつ、商売でも勝てるよう布陣を敷く。
価格の面で不安要素がありつつも(ただ、それは利益率重視の企業としては、正しい戦略)、まだまだキヤノンは頑張れそうである。

さて、ここにソニーがどのように絡んでくるのだろう。
EVFレスのNEXタイプの廉価フルサイズ機が噂されている。実売10万円未満とも言われており、もし実現すると、フルサイズ=高価という図式が完全に壊れることになる。(既にα7で大分壊れてしまっているが)

これは、フルサイズの市場で値崩れを発生させる「禁断の扉」を開くことになる。

まだまだ、デジカメ市場は面白い。