前回の日記(8/25で4日前か)で、「ソニーが最近面白い」と題して、α55とα33というデジタル一眼レフの新製品を色々と褒めていたのだが、そのときに、以下のような件があった。
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またハード面でも、当たり前のようにバリアングル液晶を搭載してくるところが、ソニーらしい。いちいち導入に踏み切れないキヤノンと比べると、このような従来の「カメラ像」から少し離れた技術(ある意味、古参のカメラ好きからすると邪道的な技術)については、家電メーカーのソニーに分があるのかもしれない(逆に言えば、そこしか活路はないかもしれない。さすがに、カールツァイスレンズだけでは勝負できないだろう。MFと割り切れば、他社のカメラでも使えるし)。
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この時点では、キヤノンから発表がなかったのだが、翌日の8/26に兼ねてから噂の出ていた「EOS 60D」が発表となった。
(参考)価格.com新製品ニュース
「キヤノン、バリアングル液晶を搭載した「EOS 60D」」
この新製品で、ようやくキヤノンはバリアングル液晶(背面の液晶を様々な角度に傾けることができる。このため、床すれすれのローアングルや、やじうまの上から撮影するようなハイアングルまで対応できる)を一眼レフに導入したことになる。
キヤノン製品としては、コンパクトデジカメであるG11で既にバリアングル液晶を搭載はしていたが、一眼レフへの導入はオリンパス、ニコン、パナソニック、ソニーなどから遅れての導入となった。
さて、新製品の60Dだが、その目玉となる機能というものがほとんどない。
これにはびっくりしてしまった。
先の記事からそのスペックを挙げてみると、
・バリアングル液晶 (←他社で導入されまくり)
・撮影画像に処理を加えてさまざまなフィルター効果を楽しめる「アートフィルター機能」(←ペンタックスK-7やK-xで既にやられている。オリンパス製品でも。)
・APS-Cサイズの約1800万画素CMOSセンサー(←下位機種に当たるEOS Kiss X4と同じセンサー。とはいえ、60Dの上位機種に当たるEOS 7Dでも同じセンサーなので、キヤノンのAPS-Cサイズは共通基盤として同センサーを使い回すのは当然と言えば当然か。しかし、とりあえず、新しい感はない。)
・映像エンジン「DIGIC 4」(←これまでの映像エンジンをそのまま使っている。50Dと同じ。)
・中央F2.8対応のオールクロス仕様の9点AFセンサー(←これも前の機種50Dと全く同じ。既に売られている7Dより低い性能。この辺りに、60Dに与えようとしているポジションが見え隠れする。つまり、エントリーモデルのKiss X4 < 中級エントリーモデルの60D < 中級機の7D といったポジショニングだ。これら3機種は全て1800万画素のAPS-CサイズのCMOSを採用していることから、光さえ同じように撮像素子に届けば、ほぼ同じようなRAWは得られるはずなので、あとはそれぞれの機種で、「どれだけ機能を出し惜しみするか」&「どれだけの価格を付けるか」でクラス分けするしかない。今回60Dに搭載された機能が全体的に、「それどっかで聞いたことあるやん・・・」とツッコミ所が多いのは、上記のような序列を創り出すためにキヤノンが恣意的に(ある意味で企業努力して)スペックを調整したためだろう。)
・記録メディアにはSD/SDHC/SDXCカードを採用(←そうか、そうか。これまで二桁D (50Dなど)より上の中級機モデルではCFが記録メディアとして採用されていたが、ついに60Dから二桁D機も世の趨勢に倣ってSDカードを使用することとなったか。これはEOS Kissなどのエントリーモデルを使用していた人からすると、新しくCFカードを購入する必要がなくなるので、中級機(60Dは中級機)への参入障壁が低くなるだろう。とはいえ、5DMkIIと50Dの体制(つまり、CFのみ使用)の自分としては、微妙といえば微妙。でも、世の中的にはいいことかな。)
といった感じで、目新しいことが無さ過ぎて笑ってしまった(笑)
それでも敢えて良いところを挙げるなら、
・軽い。(675gである。エントリーモデルのKiss X4は530g、前機種の50Dは730gで、上位機種の7Dは820g、ちなみにその上のクラスの5DMkIIは810gとむしろ7Dより軽い。というわけで、中級機の性能を持ちながらも700gに達しないのは「軽い」方なのである。
また蛇足だが、ミラーレス一眼のオリンパス ペンLite E-PL1は296gで、ソニー NEX-5Aは229gである。こう並べてみると、ミラーレス一眼が驚異的に軽いことがわかる。ちなみに、60Dでは軽さを優先する結果、ボディーはプラスチック製となっている。マグネシウム合金の堅牢性、剛性感が好きないわゆる「中級機好き」には、この点がむしろマイナスかもしれない。ちなみに、僕はそっち・・・(笑))
・フルハイビジョン解像度での動画撮影が可能(7Dでもあったなぁ。しかも、僕は動画やらないしなぁー・・・)
・マルチアスペクト撮影(撮影時に、縦横比を1:1や16:9等に変えられる。1:1なら、中判の6×6っぽい感じに、16:9なら液晶テレビに出力する際に便利だ。とはいえ、、通常は基本的にフルサイズやAPSの比率で撮っていることに不満はないし、必要になれば、いくらでもPhotoshopでトリミングできるしなぁー。結局この機能も小手先感が・・・)
と、「いい所を敢えて挙げる」つもりが、結局、「・・・」で終わってしまうのは、やはり60Dに過剰な期待をしていた証拠なのだろう。
「7Dよりも後に出るのだから、機能はそれよりも高いに違いない」という思い込みがあり、結果的に、7Dより劣る(もしくは一部同等の)機能の機種が出てきたのだから、そう思ってしまうのだろう。
しかし、キヤノン側から言わせれば、
「60Dはあくまでも、7Dより下位機種なの!でも、一応中級機なの!そういうポジショニングにするって決めたんだから!」
ってことだろう。
実際、このクラスの機種が欲しい人(イメージとしては、Kissで一眼レフに慣れた男性で、「ぼちぼち、この赤いKissのロゴも恥ずかしいし、中級機に行こうかな」と思っている人。ただ、そういう人って、さらに上位に7Dがいて、その上、価格が7Dと60Dで発売時点ではそれぞれ最安値で大体11万という状況だと、機能面で優れる7Dに行ってしまう気がするんだけどなあ。7Dより60Dがいい点というのは、せいぜい、バリアングル液晶と軽いことくらい。やはりポジショニングが難しい・・・。もし60Dの値崩れが激しくなって、価格も7Dと差がつけばいいのかもしれないけど。例えば、8万円くらいだったら、すごく競争力のあるカメラになると思う。しかし、それって「値崩れ」具合に依存しているわけで戦略としてどうなんだろう?)もいるだろうし、他社のミラーレス一眼で画質に満足できなくなった人も食指を伸ばすかもしれないし、それなりには売れるのだろう(多分)。
恐らく、この機種はこれまで培ってきた技術の延長で作っているので、開発費は安いはず。ここで利益を上げておいて、今後の大幅なモデルチェンジに転換して行く・・・なーんて言うストラテジーが組まれていたら素敵だ。
特に、これから見込まれるイベントとして、
5D Mark IIIの発表
1D系新機種の発表
7D Mark IIの発表
映像エンジンの刷新「DIGIC 5」の発表
ミラーレス機の発表
等が巷では噂されているが、この中でも、特に映像エンジンの刷新にはおおいに期待したい。ひょっとすると、今回の60DがDIGIC 4時代の最後の一眼レフになる可能性がある。
流れとしては、「5D Mark III」に「DIGIC 5」を搭載し、AFは7D並みの19点測距かそれ以上、連続撮影枚数は10コマ/秒(きついか?)、ISO感度はノイズが気にならないレベルとして6400まで(現在5D MarkIIを使用していて、ISO 2000が見れるレベルとしては限界と感じている)、くらいの王道的進化は期待できそうだ。それを上回るのであれば、大変喜ばしい。(そして悩ましくもある(笑))。
さて、そんなわけで、前回と今回で一眼レフへの開発に急速にアクセルをかけ始めたソニーと、アップルのごとき絨毯爆撃方式のラインナップを展開する東の横綱キヤノンとを比較してみたわけだが、同じような比較をしている(その上、より分かりやすい!)ブログを発見してしまった。
エンゾーの物欲まみれ
「キヤノンの王道、ソニーの新道」
このブログの作者「エンゾーさん」は可処分所得のほとんどをカメラに費やす程のカメラ好きで、あまりに好きすぎて結果としてカメラのアクセサリー会社を立ち上げてしまったくらいだ(しかも、その製品がどれもいいかんじなのである)。ペンタックスファンでもあり、以前からこのサイトではカメラの勉強をさせていただいていた。新製品の情報にもいち早く反応しているので、カメラ好き(厳密には写真好きとカメラ好きは一致しない。僕は半々くらいのつもりだが、たまにカメラ好きの方が強いのかも?と思うときもある(笑))には、一見の価値あるサイトだ。
さて、上記のリンクを辿っていただければわかることだが、やはりソニーのα55のインパクトは相当なものなのだと再認識してしまった。
技術革新(イノベーション)というものが、既存の価値観や序列や市場を一旦破壊して、新たな市場や価値観や序列を提示することをクレイトン・M・クリステンセンは「破壊的イノベーション」と呼んだが、そういったことが今、まさにデジタル一眼レフカメラの世界で起きようとしようとしているのかもしれない。
僕自身はまだ体感していないが、聞く所よると富士フィルムの3Dカメラもかなり実用に耐えるレベルになってきているらしい。もし3Dカメラが一定の市民権を得るとすると、これまでの「写真はプリントして見るもの」という既成概念すら壊れ始める可能性もある。「持ち歩くには重い」と言われてしまっているが、iPadのような形状をした3D再生の可能なフォトビューワーが当たり前になってくるのかもしれない。(もちろん、それでもフィルムカメラをやる人や、自宅で現像する人や、プリントして楽しむ人が一定数いることは間違いないし、僕自身もプリントで楽しみたい方だ)
以前(2009年11月頃)、ニッシンカメラの店員さんと雑談をしていたときに、以下のような話があったのを思い出す。
僕
「今、デジタル一眼ってAPS-Cの撮像素子が一般的で、上級機になると35mmフルサイズになりますよね。このフルサイズってそのうち安くなって一般的になるんですかね?」
店員さん
「ある程度は中級機に普及してくるかもしれませんねぇ。でもまだまだ時間かかりそうですけど。」
僕
「そうなると、上級機はもはやフルサイズってだけじゃ中級機以下と差別化できませんよね。フルサイズの次の技術ってどうなるんですかね?もしかして中判とか?」
店員さん
「いやー、中判はレンズ径自体から見直さないといけなくなるから、おいそれと出ないと思いますよ。むしろ、・・・デジタルカメラは、フィルムとは全く違う方向に進化すると思うんですよね。」
僕
「・・・? 全く違う方向って?」
店員さんは冗談っぽく、こう言った。
「3Dとか、ですね(笑)」
このときは、「3D?なんだそりゃ。」と心の中で思ったものだが、たかだか9ヶ月の間で、
映画アバターをIMAXシアターで観賞し、「3Dってマジで三次元的に見える」ことを実感(2月頃)、3Dテレビの相次ぐ発売(とはいえ、眼鏡が必要な現段階では市場の数%くらいしか売れていないらしい。だが、先日、東芝が眼鏡無しで3Dを見れるテレビを発表しており、今後市場は動くものと予想される)、ニンテンドー3DSが眼鏡無しで3Dを見られるパネルを採用し話題になり、富士フィルムが3Dデジカメを発表、・・・といった形で、「3D写真」というものがにわかに現実味を帯びてきた。
確かに、3D写真は既存の写真の概念を崩すイノベーションだ。
そして、こういったイノベーションにいち早く取り組むのは、富士フィルム(基盤がある)か、ソニーのような家電メーカーのように思う。なんとなくなのだが・・・この技術についてもキヤノンは後塵を拝するように思えてしまう。
キヤノンはいつまで横綱であり続けられるだろうか?
DIGIC 5以降のキヤノンの舵取りが楽しみである。
listening to Gorillaz / Gorillaz